日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックは、糖尿病や末梢動脈疾患(PAD)・閉塞性動脈硬化症(ASO)による足病変の予防・早期発見・早期治療の啓発を目的とし昨年、2月10日を「フットケアの日」として制定した。
虚血性足病変の有病者数は320万人 治療法は大きく進歩
末梢動脈疾患(PAD)/閉塞性動脈硬化症(ASO)は、足の動脈が狭くなったり、つまったりした結果、血液の流れが悪くなった状態を指す。足の冷感、しびれや色調の変化(蒼白)、間欠性跛行、安静時疼痛などの症状があり、重症化すると潰瘍や組織欠損が生じる。
足病変は、糖尿病神経障害、感染症、動脈硬化などが原因となり起こる。糖尿病があると特にPAD/ASOによる足病変が悪化しやすい。糖尿病は動脈硬化を促進するのに加え、膝から下の動脈(下腿動脈)が詰まりやすくし、血流の迂回路ができにくいため、足部の虚血が高度となり重症化しやすいからだ。
PAD/ASOによる足病変は、足の潰瘍・壊死から重症化すると足切断に至る危険性がある。日頃のフットケアや足病変の早期発見・治療が重要であり、患者自らが足の状態をチェックし足の異変に気づき受診することも大切となる。
足病変が進行した場合も、ここ数年で治療法は大きく変わった。治療は、▽運動療法、▽薬物療法、▽カテーテル治療、▽外科的治療(バイパス手術)などがある。このうちカテーテル治療は心臓血管治療などの手法を応用したもので、足の付け根の動脈、膝の裏の動脈などから細い管を動脈に入れ、バルーンや金属製のステントで狭くなった血管を拡張する治療法だ。
しかし、実際には診断・治療が遅れ、足の切断に至る人は後を絶たない。日本では、糖尿病患者の急増や高齢化社会にともない糖尿病やPAD/ASOによる足病変が増加している。60歳以上の約700万人が足病変を発症しており、PADの有病者数は320万人と推定されている。これは、がんによる死亡数35万人を大きく上回っている。
4割が足病変のフットケアを受けていない
日本フットケア学会、日本下肢救済・足病学会、日本メドトロニックは、糖尿病性神経障害や末梢動脈疾患(PAD)を要因とする足病変に対して、適切な診断・治療を受けられず下肢切断に至っているケースがあることを問題視し、その解決策を探るために下肢救済に関わる治療実態をあきらかにすることを目的に患者・医師を対象とした調査を行った。
患者調査は、(社)全国腎臓病協議会の協力を得て、足病変のハイリスク患者である透析患者4,102人を対象に行われた。
● PADに関する検査・治療について知っている人は2割
調査の結果、PAD/ASOについて「検査、治療内容、治療してくれる診療科、治療後について詳しく知っている」と回答した人は全体の18.2%と2割未満であることがあきらかになった。
また、糖尿病透析患者と非糖尿病透析患者の2群に分けて比較したところ、非糖尿病透析患者は糖尿病透析患者と比べ「検査、治療内容、治療してくれる診療科、治療後について詳しく知っている」と回答した人の割合は10ポイント以上低く15.4%にとどまった。
● 44.8%は自分がPADになりやすいことを知らない
「PAD/ASOを聞いたことがある」と回答した人のうち、「透析を受けている人は、PAD/ASOになりやすいことを知っている」と回答した人は55.2%にとどまり、44.8%は慢性腎臓病、特に透析が末梢動脈疾患(PAD)の危険因子であることを知らないことがあきらかとなった。
また、糖尿病透析患者と非糖尿病透析患者の2群に分けて比較したところ、非糖尿病透析患者は糖尿病透析患者と比べ、疾患へ理解度が全般的に低い傾向にあった。
● 足病変ハイリスク患者にもかかわらず「足の健康管理」に対する意識が不十分
また、PADなどによる足病変を発症するリスクが高く、日ごろから足の健康管理が必要であるにもかかわらず、その一環として「足の爪をこまめに切ったり、胼胝べんち(タコ)や角質のケアを行っている」人が47.0%、「足に傷がないかこまめに確認している」人が34.5%、「足を保護するため自分にあった履物を選んだり特注して履いている」人は23.6%と、足の健康管理に対して意識が十分でないことがあきらかになった。
● 足病変ハイリスク患者にもかかわらず4割がフットケアを受けず
PADなどによる足病変ハイリスク患者にもかかわらず、足に傷が無いかどうかの確認や爪きり、胼胝べんち(タコ)の処理などの「フットケアを定期的に受けている」人は41.9%にとどまり、「フットケアを受けていない」人は43.5%に上った。
医師向け調査の結果についてはこちらをご覧ください
年間1万人以上が足切断 救済に向けて実態調査
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[ Terahata ]