今日のティーンエイジャーの多くは睡眠不足で、睡眠不足はインスリン抵抗性を高め、ひいては2型糖尿病の発症につながる可能性があると、米国の研究者が発表した。インスリン抵抗性は心臓病のリスク上昇も引き起こす。「睡眠時間を1時間増やすと、インスリン抵抗性が9%改善する」と研究者はアドバイスしている。
米ピッツバーグ大学医学部のカレン・マシューズ氏(精神医学)らは、高校生245人(男子116人、女子129人)を対象に、睡眠とインスリン抵抗性との関係を検討した。米国睡眠医学会が発行する医学誌「Sleep」に発表した。
血液中のブドウ糖(血糖)は膵臓から分泌されるインスリンというホルモンにより全身の細胞に取り込まれ、エネルギーに変えられる。膵臓からインスリンが血中に分泌されているにもかかわらず、肥満などが原因で、筋肉や脂肪細胞などでインスリンに対する感受性が低下し、その作用が鈍くなっている状態が「インスリン抵抗性」だ。
インスリン抵抗性が続くと、血糖値が下がりにくくなり、血糖値を正常状態に戻すためにより多くのインスリンが必要となる。血糖値が上昇するために2型糖尿病を発症する危険性が高まるだけでなく、心臓病のリスクも高くなる。
研究では、参加者に1週間にわたって腕時計型の測定器(アクチグラフ)を着用してもらい、安静した状態が持続した時間を測定した。同時に睡眠日誌を付けてもらい、空腹時に採血し血液検査を行った。
米国のティーンエイジャーの多くは、パソコンやインターネット、深夜まで続くテレビ視聴、友人などとの電話に時間を費やし夜更かしをし、睡眠時間が短い傾向がある。試験期間中の1日の合計睡眠時間の平均は、睡眠日誌で7.4時間、アクチグラフで6.4時間だった。
年齢、人種、性、BMI(肥満指数)、ウエストサイズ(腹囲)の影響を調整して分析した結果、その週の睡眠時間が短いことが、インスリン抵抗性指数(HOMA-IR)が高いこと、つまり2型糖尿病になりやすい状態と関係していることがあきらかになった。睡眠の分断はHOMA-IRとは関係しなかったものの、血糖値との関係がみられたという。
「短い睡眠時間とインスリン抵抗性には関連があり、インスリン抵抗性が高い水準で続くと、2型糖尿病の発症が増える。1日の睡眠時間が6時間未満の状態が続くと、2型糖尿病の発症が増えたり、心臓病や脳卒中の危険性が高まる」とマシューズ氏は警笛を鳴らしている。
睡眠に関する生活習慣は固定化しやすい傾向がある。学生の頃から睡眠不足が常態化していると、就職してからも睡眠不足が続き、さまざまな健康問題を引き起こす可能性があるという。
「現在の若者の睡眠時間は、1930〜40年代の世代に比べ、あきらかに減少している。1晩に6時間眠るのを習慣としている若者が、睡眠時間を1時間増やすと、インスリン抵抗性が9%改善するという報告もある」とマシューズ氏は述べている。
Lack of sleep leads to insulin resistance in teens(米国睡眠医学アカデミー 2012年10月1日)
[ Terahata ]