からだの内臓脂肪が食欲を抑える蛋白質を働かせるよう神経を通じて脳に信号を出していることを、東北大大学院医学系研究科の片桐秀樹教授(内分泌代謝学)らのグループがマウスの実験であきらかにし、米国の医学誌「Cell Metabolism」に発表した。
脂肪は体内でおもにエネルギーの貯蔵庫としての役割を果たしており、ヒトも含めて多くの動物が生きる上で脂肪が果たす役割は重要だが、過剰に摂取するとさまざまな健康問題をもたらす。
レプチンは脂肪細胞から分泌されるサイトカイン(生理活性物質)の一種。糖代謝を改善しインスリンの感受性を高めエネルギー消費を増やしたり、食欲を抑制する作用がある。脂肪が増えた肥満の状態ではレプチンに対する感受性が低下すると考えられ、これが肥満によりインスリン抵抗性が高くなる一因であると推測されている。今回の研究では、内臓脂肪の信号を出す機能の低下が影響していることが分かっ
た。
研究グループは、肥満の状態にしたマウスの内臓脂肪の細胞に、活動を活発化させる遺伝子を導入したところ、脳内でレプチンの働きが向上して食欲が減り、食事量が約2分の1に減少した。また、内臓脂肪と脳を結ぶ神経を切断し、同様に遺伝子を導入してもレプチンの働きは回復せず、食事量はほとんど減らなかった。この信号がレプチンの働きをコントロールし、脳の中枢にレプチンから刺激を受けるようはたらきかけ、食欲を調節すると考えられている。
脂肪組織から分泌されるホルモンやサイトカイン(アディポサイトカイン)には、レプチンの他に、抗動脈硬化作用のあるアディポネクチン、血栓を作るPAI-1、炎症やインスリン抵抗性を引き起こすTNF-α、レジスチンなどがある。
Cell Metabolism, Vol 3, 223-229, March 2006
Cell Metabolism Online(英文・要約)
[ Terahata ]