また、当院には、葛飾高砂会という日本糖尿病協会の患者会があります。会員は約200名で、年に10回、勉強会を開催しています。勉強熱心な方も多く、毎回知恵を絞りながら会の企画・運営に奮闘しています。
血糖コントロールを乱し、食事療法の障害になっているのは、間食だけが原因ではないかもしれませんが、とりあえず良くするために、減らす、やめてみるということをトライしてもらうことは大切です。まずは"食前の血糖値が高い状態は良くない"ことを患者さんに理解してもらいます。間食指導パネルのグラフを活用しながら、この "血糖日内変動のホップ・ステップ・ジャンプ" を説明します。
初診の方については、ひと通りお話をすれば、間食をしなくなることも多いので、やはりそういう方達は、血糖コントロールが改善されることが多いです。当院では、苦労して間食をやめたというよりも、最初の段階でやめて、非常に改善したという方の方が多いような気がします。ただ、通院期間が長い方になると、お仕事の都合で間食をしてしまうとか、ストレスが溜まるんだよね、と仰って間食を続けていらっしゃる方も時々おられます。そういう方に対しては、否定するのではなく、あなたに今足りない栄養素はこれだから、食べるんだったらこれにしてみようとか、代替となる食品を提案してみます。
加藤: 最近、私がよく活用しているのが、「Dr.今井の塩分・栄養診断ソフト」で食事内容を分析、患者さんと食生活についてお話をしながら、非常に簡単にその方の足りない栄養素などを分析し、改善点をアドバイスします。
まずは、写真で選びながらパネルPCに入力します。その中で、間食に、例えば、バウムクーヘンやシュークリームなどを食べていた場合、どうしても脂質が増えてしまいます。間食の原因として、もし小腹がすいているのであれば、むしろおにぎりを食べた方がいいのでは?ヨーグルトはどうですか?といったアドバイスをします。夕食の量を少し減らして、小腹を充たしてもらうといった工夫を一緒に考えます。
また、食事でも、おかずが多いと炭水化物が減り、たんぱく質や脂質が増えてバランスが崩れるといった問題もでてきます。とくに体重を減らそうとする場合は、バランスよく食べないと、どこかで反動が出てしまうんです。単に、間食をやめなさい、というお話でなく、あなたは何が足りないから、何を食べた方がいい、という話の展開の方が患者さんもスムーズに許容されるのではと考えます。その方の食事全体からみて、間食をどうコントロールするべきかを、納得していただきながら指導していくのが有効かと思われます。
当院で、栄養指導を受けた患者さん607名の「エネルギーの栄養素別構成比」を見てみました。平均年齢58.5歳で、1日の摂取エネルギーの平均は2060kcalです。すると、炭水化物の比率は平均51%と少ないことがわかりました。これに対し、脂質は25%、たんぱく質は24%と、そのぶん高くなります。そこで、高炭水化物群と低炭水化物群に分けて分析してみました。やはり低い群は、おかずが多くなるということなので、総摂取エネルギー量はじめ、たんぱく質や脂質が総じて高くなります。これを見ると、むしろご飯をきちんと食べて、おかずの内容を考えた方が糖尿病の治療という意味では有効と言えるのかもしれません。もし低炭水化物食にするならば、より一層、飽和脂肪酸や塩分を減らし、食物繊維をしっかり摂らなくてはいけません。また食費も高くなりがちであることも知っておく必要があります。
「補食」という意味では、低血糖になることが多い時間帯というのがその方その方によってありますから、低血糖になりそうな時間帯の前にあらかじめ時間を決めて、決まった食品を食べるのが有効です。この「補食の例」には、プルーンを入れてあります。糖尿病食品交換表では、プルーンをはじめとするドライフルーツは、糖質が高いので嗜好食品の扱いになっており、お勧めできないと書いてあります。ですが、ビタミン、ミネラルの意味を考えると、むしろ食べた方がいいのではないかと考えています。低血糖の時にブドウ糖を食べるよりも、その前に補食として、栄養価の高いプルーンのようなものを食べておいたほうが良いのではということです。
やせた患者さんで、補食をどうしたらよいか?という時は、ミックスナッツのようなもの、柿の種の小袋をお勧めすることがあります。ナッツ類は脂肪が多いので血糖値をキープできます。あられで、ある程度糖質を摂って血糖値を上げ、低血糖予防に活用する場合もあります。