食事療法と運動療法によってトリグリセライドが低下しますが、どこまで下げれば良いのでしょうか?
実をいうと、コレステロールと違ってトリグリセライドは日内変動が大きいことや、近年になってから高トリグリセライド血症の重要性が注目され始めたことが関係して、臨床研究データがそれほど蓄積されていません。医療関係者向けのガイドラインを見ても、LDL(悪玉)コレステロールについては血管障害の危険因子の程度に応じて治療目標が細かく分かれていて、糖尿病の患者さんは厳格にコントロールすることが推奨されているのに対し、トリグリセライドについては今のところ、危険因子の有無や程度に関係なく「空腹時採血の検査で150mg/dL」という数値が示されています。
それぞれの患者さんの状態に即した信頼性の高いトリグリセライドコントロールの目安が示されるようになるには、もう少し今後の研究の成果を待たなければなりません。ただし、現在でもすでに、HDL(善玉)コレステロール以外の血清脂質値(LDLコレステロールとトリグリセライド,non-HDLコレステロール)は、低ければ低いほど良いと考えられています。
そしてなにより、今すでに脂質異常症であることがわかっている患者さんの場合、研究が十分に進むのを待ってから治療するのでは遅すぎます。それまでの間に血管障害が進んでしまうかもしれません。とくに糖尿病の患者さんの場合は血管障害が進みやすいのでなおさらです。糖尿病がある場合、食後の高トリグリセライド血症もしっかりコントロールするために、空腹時採血の検査なら100mg/dL近くまで下げたほうがよい、という意見もあります。
現実的な考え方としては、ガイドラインが示している「空腹時で150mg/dL」未満を1つの目安にコントロールすべきと言えるでしょう。この目標を食事療法と運動療法だけで実現するのはなかなか困難なことが少なくありません。そのようなとき、薬を使ってコントロールすることになります。