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糖尿病セミナー
血糖自己測定とは

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生

編集
タニタ体重科学研究所名誉所長
糖尿病治療研究会名誉顧問
東京慈恵会医科大学元教授 池田義雄先生

  • 血糖自己測定(SMBG)とは
  • メリットがこんなにあります
  • 血糖自己測定のメリット
  • 血糖自己測定がとくに有効な場合
  • 血糖自己測定の実際
  • どう測るか(方法、ねらい、回数)
  • Q&A
  • 効果バツグンの5つの提案

    血糖自己測定(SMBG)とは

     糖尿病の治療は、血糖のコントロールが基本です。しかし、血糖の動きは、厳密にいうと人によって全部異なり、また、いつも一定とは限らないのです。インスリンや経口薬などの薬を使っていると、その動きはさらに複雑になります。
     そんな血糖を適正にコントロールするには、血糖の動きをモニターし、コントロールがきちんとできているかどうかを、チェックする必要があります。とくに、インスリン療法では、血糖の状態によって、インスリンや食事の調整が必要なため、きめ細かい血糖のチェックが必要です。日常の生活でもそのチェックをできるようにしたのが、血糖自己測定です。医療機関でしかできなかった血糖測定を、自宅でも24時間いつでも測定でき、揺れ動く血糖をリアルタイムでとらえる。そして、その血糖の値を治療にフィードバックする。このシステムが、より正常に近い、厳密なコントロールを可にします。この方法に関する研究を、私たちは1976年、世界に先駆けて開始し、実用化をはかったのです。
     その結果、血糖自己測定は、インスリン療法を支える重要な手段であると同時に、健康人と変わらない社会生活を実現する頼もしい「助っ人」となるに至ったというわけです。
      【SMBG:Self Monitoring of Blood Glucose の略で、血糖自己測定のこと】

    血糖自己測定は、コントロール改善の強力な助っ人です
    主治医の
    B先生
    2型糖尿病のA子さん

    (中間型インスリンを1日1回注射)
    A子さん:まぁ、これが私の血糖値ですか? ずいぶん高いですねえ。
    B先生:その通りです。今後の課題は正常値との差(青色部分)をどう縮めるかですね。血糖を自己測定すると、どこを治せばいいかがはっきりしてきます。

    メリットがこんなにあります

     自分で血糖を測ると、いろいろなことが見えてきます。ひとつひとつの行為が血糖に及ぼす影響、病状との関係などなど、理解が深まるにつれ、治療にフィードバックする内容も充実してきます。
     その結果、血糖のコントロールが一段と向上し、短期的には低血糖やケトアシドーシスなど急性の合併症の回避、長期的には網膜症や腎症など慢性合併症の発症や進展の防止など、さまざまなメリットが得られるようになります。
      血糖自己測定のメリット
      (1) 日常生活と血糖値の相関関係が、リアルタイムでわかる
      (2) きめの細かい適正なコントロールができる
      (3) 効果的な自己注射療法(インスリン、インクレチン)ができる
      (4) 急性、慢性の合併症の進展を防止できる
      (5) 通院回数や入院を減らすことができる
      (6) 良好なコントロールへの意欲が増す
      (7) 病気に対する理解が深まり、治療への意欲がわく
      (8) 安全な妊娠・出産が計画的にできる
      (9) 日常生活の質が向上し、積極的に行動できる


    こんな場合に有効です

     一言でいうと、血糖が不安定な人すべてに、血糖自己測定は有効です。とくに、外からのインスリン補給(インスリン療法)が必要な患者さんは、1型、2型かかわらず、欠かせません。
     経口薬療法の人、あるいは食事療法だけの人でも、治療効果が上がらない場合は、原因をさぐる有力な手段となります。また、さらに厳密なコントロールをめざす患者さんにも、血糖自己測定は、数々のメリットを与えてくれるでしょう。その意味では、すべての糖尿病の人にとって、有効な手段といえます。
     ただ、現在のところ、血糖自己測定が健康保険適用の対象になる方は、限られています(Q&A参照)。
    血糖自己測定がとくに有効な場合
    自己注射療法をしている人
     (1型糖尿病、2型糖尿病ともに)
    妊娠時あるいは妊娠希望時
    糖尿病以外の病気にかかった時(シックデイ)
    ポンプ療法など、特殊なインスリン療法をしている場合
    いつもと状態が違うと感じた時

    血糖自己測定の実際

    どう測るか (方法、ねらい、回数)

    食事、運動、ストレスをマークせよ
      血糖測定のポイント

     血糖は、食事、運動、ストレスなどで、とくに大きく変動します。
     血糖測定を行う場合、ポイントがふたつあります。ひとつは、コントロールの状態をチェックするために、1日24時間の血糖の動きを知る必要があること。もうひとつは、血糖は、食事、運動、ストレスなどで大きく変動するため(右図)、とくにこれらの影響を中心にチェックすることです。こうした点から、食事を中心に測定ポイントを設定した基本パターン(下)もあります。
     しかし、患者さんが100人いれば100通りの治療法があり、それによって測定の方法も異なるため、必ずしも基本パターンにこだわらず、自分に合った方法を、主治医と相談してみつけだすことが大切です。
     処方のひとつとして、大体2〜4週間を単位として実施し、得られた結果を検討・修正していく方法が一般的です。また、コントロールが悪化した場合の緊急時の対応や、インスリン量や食事量などの調整は、おおよその許容範囲と具対策を、あらかじめ主治医と決めておきます。
     実際に、思わぬ低血糖やコントロールの悪化などが起きた場合は、必ずその原因を考え、その後のコントロールに生かす姿勢が大切です。こうした試行錯誤を2、3カ月も繰り返すうち、自分の血糖の傾向やコントロールの加減が、だんだんつかめてくるものです。

    測定ポイントの基本パターン 
    インスリン注射朝食昼食夕食就 寝
    深夜早朝
    1日1回  
    1日2回
    (2分割・混注)
    1日3〜4回
    (3〜4分割・混注)
    必ず できたら 必要に応じて

    どう生かすか (記録、フィードバック)

     血糖自己測定のデータはそのつど記録し、通院時に主治医と検討します。主治医は、そのデータと、通院時に測定した HbA1c検査(過去1〜2カ月の平均血糖値と相関する検査値)などの結果を、総合的に判断して今後の方針を決め、治療法の修正の指示や次の目標を設定したりします。

      あなたのコントロールをチェックしてみましょう
         コントロールの目安と評価

       コントロールの目標値は、患者さんひとりひとり違います。ここに示すのは一般的にみた目安です。これを努力目標としてがんばってみましょう。

      日本糖尿病学会「科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン2013」より一部改編

      何で測るか (測定器の進歩と特徴)

       血糖自己測定が在宅で簡単にできる簡易測定器の、最近の進歩はめざましく、小型で軽量で、操作も簡便な、使いやすい機種がいろいろ出ています。種類を大別すると、次のふたつに分けられます。
       採取した血液のぶどう糖の量を、試験紙に付けたぶどう糖酸化酵素に反応させ、結果を電流で測るタイプ(電極法)と、試験紙の色の変化で測るタイプ(試験紙法)です。
       いずれのタイプも、採血量が少なくてすみ、測定時間が短い、血液の拭き取りが不要(あるいは簡単)、操作がワンタッチなど、使いやすさや測定精度を追及した、さまざまな特徴を備えています。
       こうした技術革新が、血糖自己測定を容易なものに変え、子供や高齢者でも容易に操作できるようになってきました。


      Q&A

      Q. 尿糖測定と血糖測定の違いは?

      A. 血糖測定が、血液から直接、血糖値を測定するのに対し、尿糖測定は、尿に浸した試験紙の色の変わり具合で、高血糖かどうかを判断するもので、血糖値を間接的に推定する方法といえます。尿糖測定は、採血の苦痛がない点がメリットですが、反面、尿糖は血糖値が約160〜180mg/dL(個人差がある)を超えないと出ないため、それ以下の場合に、すべて陰性となってしまう問題点があります。
       この点を克服したのがデジタル尿糖計(kkタニタ)です。0〜2000mg/dLまでの尿糖量が示されるため、食事、運動、治療薬の効果の判定に役立ちます。境界型を含め軽症の糖尿病のコントロールにはお勧めです。

      Q. より正確に測定するコツは?

      A. 決められている測定方法を守ることが大切です。よくあるミスポイントとして、試験紙の保管期限や保管状態が守られていない、採血前に手を洗っていない(または手が乾いていない)、測定に必要な量の血液を採血できていない、極端に寒い(または暑い)場所で使用している、などが挙げられます。試験紙の保管方法や測定に必要な採血量、使用可能な環境温度などは、測定器ごとに異なりますので、ご使用前に確認してください。なお、もし測定結果に疑問があれば医師・医療スタッフに尋ねてください。

      Q. 血糖自己測定に健保はききますか?

      A. インスリン等の自己注射療法をされている患者さんは、医師が指示した1日の測定回数に応じて、必要な枚数の試験紙が保険で給付されます。また、測定に必要な簡易測定器や穿刺針、穿刺器具なども給付の対象です。
       自己注射療法をしていない患者さんも、病状によっては年に1度、健保が適用されます。いつどのように導入するのがよいのかについては、主治医のアドバイスに従ってください。
       なお、保険でカバーされる部分以外の自己負担金額は、確定申告時に医療費控除の対象となります(詳しくは税務署にご相談ください)。

      効果バツグンの5つの提案

      (1) 採血は、おなかや二の腕が痛くない

       採血は、よく指先からしますが、少しでも痛みを減らしたい場合は、指先より痛点の少ない手掌(たなごころの部分)、上腕外側部、腹壁などをお試しください。

      (2) メモ魔になる

       血糖値を記録するだけでなく、気付いたことは何でもメモしておきましょう。メモは、コントロール改善のためのヒントの宝庫です。

      (3) 先手必勝、低血糖

       理想的な血糖値をめざすほど、低血糖との闘いになります。低血糖になる前に、自己測定で早期発見、早期対応で、ナイスコントロール。

      (4) 食前・食後、セットで測定を

       HbA1cを下げるには、食後の高血糖をいかに抑えるかがポイントです。食前だけでなく食後もセットで測定し、コントロールすることがコツ。

      (5) 測定機器はきれいに、過保護に

       精密機器はデリケート。血液の汚れ、小さなほこりが故障の原因になります。使用後は清潔に。持ち運びは専用の袋やケースに入れましょう。
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