HealthDay News

2021年04月14日

切断リスクの高い難治性足潰瘍に対する新規治療

 糖尿病の深刻な合併症の1つである難治性の足潰瘍に対する、自己脂肪組織由 来間質血管画分細胞を利用した、新規治療法の有効性を示唆するデータが報告された。ニカラグアで63人の患者を対象に実施され、大半の患者が治癒に至ったという。研究の詳細は「Stem Cells Translational Medicine」に4月7日掲載された。この結果を受けて研究者らは、米国内でも同様の研究を実施して再現性を確認すべきと述べている。

 米国内で発生する下肢切断の半数以上が、糖尿病関連とされている。下肢切断は、難治性の潰瘍が原因であることが多い。糖尿病患者にそのような難治性足潰瘍が生じる背景について、本論文の筆頭著者である米ウェイクフォレスト大学再生医療研究所のMichaelCarstens氏は、「理由は複数存在する」と述べている。

 同氏によると、足潰瘍に至る流れは、糖尿病による慢性的な高血糖状態が足の神経を障害し、感覚を失わせることに始まるという。感覚を失うと、怪我をしても痛みが生じず、感染を起こして悪化するまで気付かない。さらに糖尿病では細い血管の障害が起きていることが多く、足先の血流が不足して創傷治癒過程が妨げられる。加えて糖尿病患者の多くは、足先の細い血管だけでなく、比較的太い動脈も閉塞していることが少なくないと同氏は解説する。

 そのような糖尿病性足潰瘍でも多くの場合は、壊死した組織を取り除くデブリードマンを徹底して行い創傷治癒機転を働かせ、適切な薬剤を用いケアを続けることで治療可能だ。しかし、一部の難治性潰瘍の場合、下肢切断のリスクが高まる。Carstens氏らは、そのような切断の危機が迫った難治性足潰瘍患者に対する、新規治療法の有効性を検討した。

 この新規治療では、まず患者本人の脂肪組織から間質血管画分(SVF)と呼ばれる細胞群を採取する。SVFの中には、新たな血管を作り出すメカニズムに重要な血管内皮前駆細胞や間葉系幹細胞などが豊富に含まれている。このSVFを潰瘍やその周辺、および下肢の動脈の近くに注射すると、血管の再生が促進され、潰瘍が治癒に向かうという仕組みだ。

 研究では、直径3cmを超える難治性足潰瘍のある63人の2型糖尿病患者にこの治療が試みられた。SVFの注射から6ヵ月時点で、51人は潰瘍が100%閉鎖し、8人が75%以上閉鎖していた。一方、3人は下肢切断に至り、1人は介入とは関連のない心疾患で死亡した。

 12ヵ月間追跡した結果、50人は潰瘍が100%閉鎖し、4人は85%以上閉鎖していた。6ヵ月から12ヵ月の追跡中に5人が死亡したが、いずれも介入とは関連がない心疾患によるものだった。

 Carstens氏はこの治療法を、「新しい血管の成長を促進することで創傷の修復を可能にするもの」と解説している。ただし、糖尿病性足潰瘍に幹細胞を使用する治療自体は、全く新規のアイデアというわけではない。米国足病医学協会(American Podiatric Medical Association;APMA)のスポークスマンであるJeffrey Ross氏は、「胎盤の羊膜由来幹細胞が創傷治癒に非常に効果的であるこ とは以前から知られていて、既に実際の治療に用いられている」と解説する。

 しかしRoss氏は、今回の研究を「インパクトのある結果だ」と述べている。同氏によると、「3人の患者は腱が露出するほど重症であったが、新規治療法により腱を再生された組織で覆うことができた。これは従来の方法では達成が困難」とのことだ。

 その一方で同氏は、「治療介入から評価までの期間が長すぎる。介入直後の短期間の変化を知りたかった」との批評も付言。そして、「既に入手可能な羊膜由来幹細胞より、患者の脂肪組織由来SVFの方が優れているか否かの判断には、両者を直接比較する研究が必要。ただし、患者自身の組織を用いる治療法の開発は、新しい潮流と言えるだろう」と語っている。

[HealthDay News 2021年4月14日]

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[ Terahata ]

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