HealthDay News

2020年10月07日

1型糖尿病の寛解が2年以上続いている若年男性

 ある種の血液疾患の治療薬を服用したところ、インスリン治療が不要になった1型糖尿病患者の症例報告が、「The New England Journal of Medicine」に10月8日、レターとして掲載された。その患者は既に2年以上、インスリン療法を行っていないという。ただし報告者の米ベイラー医科大学のLisa Forbes氏らは、この薬剤を「1型糖尿病の治療薬」とは呼んでいない。

 この患者に処方されているのは、ヤヌスキナーゼ(JAK)阻害薬「ルキソリチニブ」という経口薬。国内でも骨髄線維症や真性多血症の治療薬として使われている。Forbes氏は、「インスリン療法を離脱した患者は、ルキソリチニブが作用することが知られている遺伝子変異を有していた。この遺伝子変異が1型糖尿病患者に多いものなのかどうかは不明であり、よってこの薬が1型糖尿病の治療薬になり得るか否かはまだ分からない」と述べている。

 1型糖尿病の詳細な原因はいまだ不明だが、多くは自己免疫疾患であろうと考えられている。本来は体外から侵入する異物を排除する仕組みである免疫が、自分のインスリン分泌細胞「β細胞」を攻撃してしまうことで1型糖尿病が発症する。

 この患者は15歳の時に、まず粘膜や皮膚に慢性のカンジダ症、下痢、口腔や直腸の潰瘍などが見られ、低γグロブリン血症を発症した。その後17歳の時に、著明な高血糖、ケトアシドーシス、Cペプチド低値、GAD抗体陽性が認められ、1型糖尿病と診断された。これらの病態を一義的に説明可能な原因を探すため、全エクソームシーケンス解析という遺伝子検査を行った結果、免疫にかかわるSTAT1遺伝子の変異が見つかった。これを根拠として、1型糖尿病の診断から9カ月後にルキソリチニブの処方が開始された。

 「ルキソリチニブは著効を示した。投与開始から1年後にインスリン療法を中止し、その後は再開していない」とForbes氏は語る。患者は現在大学に通学中で、「ルキソリチニブが経口薬であるためにとても助かる」と語っているという。ただしルキソリチニブの服用を続けるには、白血球数や肝機能、腎機能などを定期的にチェックする必要がある。また免疫を抑制するように働くため、感染症にかかりやすくなるという問題もある。

 Forbes氏はJAK阻害薬による1型糖尿病治療の可能性に期待感を募らせているが、それは同氏ばかりでない。JDRF(旧青少年糖尿病研究財団)のFrank Martin氏によると、同財団はこれまでにもJAK阻害薬による治療の研究に資金を提供してきており、新規発症1型糖尿病患者を対象とする臨床試験をまもなくオーストラリアで開始する予定という。

 Martin氏は、「JAK阻害薬は免疫系を抑制するために自己免疫疾患の治療に用いられている。その作用がβ細胞を保護するように働き、1型糖尿病の治療にも有効との結果が得られることを強く望んでいる」と語っている。オーストラリアでの臨床試験は新規発症患者を対象としているが、長年1型糖尿病を抱えてきた患者も同薬の恩恵を受けられる可能性があると同氏は考えている。「罹病期間が長い場合、インスリン療法の継続が必要になることが多いかもしれないが、投与量を減らせる可能性はある」と述べている。

 Forbes氏と同様に、Martin氏もルキソリチニブを「1型糖尿病の治療薬」とまでは言っていない。ルキソリチニブもまたインスリンと同様に継続的に使用する必要があり、1型糖尿病を治癒に導く薬ではないからだ。しかし同氏は、「われわれが望んでいることは根治療法の確立だが、この研究はその方向へ歩みを進める一歩なのではないか」と語っている。

[HealthDay News 2020年10月7日]

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[ Terahata ]

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