HealthDay News

2020年10月21日

1型糖尿病を引き起こすT細胞が健常者の膵臓にも存在

 1型糖尿病を引き起こすT細胞は、糖尿病でない人の膵臓にも存在していることが明らかになった。米ラホヤ免疫研究所のMatthias von Herrath氏らの研究によるもので、同氏は「健康な人の膵臓にも危険なT細胞が存在していることに驚いた。それらの細胞は、β細胞を攻撃する合図を待っているかのように見える」と話している。研究の詳細は、「Science Advances」に10月16日掲載された。

 1型糖尿病は、血糖値を下げるホルモン「インスリン」を産生する膵臓のβ細胞が障害されてインスリンが分泌されなくなり、インスリン療法が生涯欠かせなくなる病気。膵臓のβ細胞が障害される主要原因に、T細胞という本来は体外から侵入した細菌などを攻撃する免疫細胞が、膵臓のβ細胞を攻撃してしまう自己免疫反応という現象がある。

 Von Herrath氏によると、自己反応性T細胞の研究は、これまで主として検体を採取しやすい血液を対象に進められてきた。膵臓組織については検体採取のハードルから、自己反応性T細胞の研究が進んでおらず、仮にそれらの細胞が膵臓で見つかれば、それは1型糖尿病の確かな兆候であろうと考えられていたという。

 これに対して同氏らが行った研究では、1型糖尿病患者と健常者の双方を含む22人の膵臓から検体を採取し、Insitu免疫染色と呼ばれる手法を用いて検討した。その結果、健常者の膵臓検体でもT細胞の存在が確認された。

 同氏は、「膵臓にそれらT細胞のある状態がデフォルト(標準)であることが分かった」と述べている。ただ、T細胞の量には個人差があり、また1型糖尿病患者では、このT細胞が膵島(β細胞が存在する場所)に近接していて、浸潤も認められた。「膵臓に存在するT細胞が、1型糖尿病の唯一の原因とは言い切れない。しかしそれらのT細胞は、主要な"容疑者"だ」と、von Herrath氏は同研究所のニュースリリースの中で語っている。

 今回の研究で得られた知見から、1型糖尿病の発症メカニズムに新たな仮説が加えられる。つまり、これまで考えられていたように、機能不全状態に陥ったT細胞が現れてβ細胞を攻撃することによって引き起こされるのではなく、膵臓内にはそのようなT細胞が既に存在していて、膵臓に何らかの変化が起きた時にβ細胞への攻撃がスタートするという考え方だ。Von Herrath氏は、「われわれの研究結果は、1型糖尿病の効果的な治療は膵臓を標的にすべきであることを意味しているのではないか」と述べている。

 同氏らは現在、膵臓内でのT細胞の振る舞いや、他のタンパク質の刺激がT細胞によるβ細胞攻撃開始の引き金になる可能性などを追究する研究を計画している。論文の筆頭著者である同研究所のChristine Bender氏は、「数々の疑問がまだ残されている」と語っている。

[HealthDay News 2020年10月21日]

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[ Terahata ]

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