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「厳格な血糖管理」のみでは長期の心血管イベント抑制効果なし
2019年06月
 2型糖尿病患者は心血管疾患を発症するリスクが高い。米国の退役軍人を対象とした先行のランダム化比較試験では、5年間の厳格な血糖コントロールを行うと、標準治療に比べてその後の心血管イベントリスクが低減することが報告されている。しかし、米フェニックス退役軍人ヘルスケアシステムのPeter Reaven氏らが今回、同コホートを15年間追跡したところ、厳格な血糖コントロールの効果は持続せず、いわゆる「レガシー(遺産)効果」は認められなかったと「New England Journal of Medicine」6月6日号に発表した。これらのリスクを低減するには、高血圧や脂質、体重などの他の心血管リスク因子を包括的に管理することが重要な可能性があるという。

 このランダム化比較試験は、退役軍人の2型糖尿病患者1,791人を対象に、標準的な治療を受ける標準療法群(899人)、または厳格な血糖降下療法を受ける強化療法群(892人)にランダムに割り付け、10年間追跡したもの。使用した血糖降下薬は両群で同じだったが、強化療法群では、十分な用量を用いてHbA1c値7%未満の達成を目指した。なお、研究開始時点における平均HbA1c値は、対象患者全体で約9%だった。

 その結果、介入期間中(中央値で5.6年間)に、平均HbA1c値は標準療法群では8.4%に、強化療法群では6.9%へと低下した。研究開始から約10年後には、標準療法群と比べて、強化療法群では心筋梗塞や脳卒中などの主要な心血管イベントリスクが17%有意に低下したことが分かった。

 そこで、Reaven氏らは、厳格な血糖コントロールのレガシー効果の可能性に注目。同コホートを15年間追跡して解析した結果、追跡終了時には、主要な心血管イベントリスクと全死亡リスクに両群間で有意な差はみられなかった。

 この結果について、Reaven氏は「高齢の2型糖尿病患者では、心血管イベント抑制に対する厳格な血糖コントロールのレガシー効果は認められなかった」と結論。その上で、「心血管イベントや死亡を抑制するには、血糖コントロールだけでは不十分で、高血圧や脂質、体重などの他の心血管リスク因子を包括的に管理する必要性も示された」と同氏は付け加えている。

 ただし、対象患者は、研究開始時点で2型糖尿病の罹病期間が平均10年以上であり、平均年齢は約60歳で、ほぼ全員が男性だった。そのため、Reaven氏らは「今回の結果は、2型糖尿病と診断されてすぐに血糖降下療法を開始した患者や、1型糖尿病患者にも当てはまるかどうかは明らかではない」としている。

 論文の付随論評を執筆した米イェール大学医学大学院のKasia Lipsk氏は「糖尿病患者の心血管イベントリスクを低減するには、厳格な血糖コントロールだけが最善の方策とはいえないようだ。血糖コントロールに加えて、禁煙や血圧コントロール、スタチン療法による脂質コントロールといったリスク因子全体の管理が重要だ」と述べている。一方、この研究に関与していない米レノックスヒル病院糖尿病研究所のGerald Bernstein氏は、降圧薬やコレステロール低下薬が広く普及したことが血糖降下薬の有益性に影響した可能性があると指摘し、「今回の研究結果を踏まえ、診療現場で血糖コントロールの方針を変える必要はない」との見方を示している。
[2019年6月5日/HealthDay News]

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