1.糖尿病治療における検査の意味
a.糖尿病は自覚症状がない病気
糖尿病はどんな病気なのかというと、「血糖値が高くなる病気」です。では、血糖値が高いままだと、将来どうなるのでしょうか?
実は、患者さんの多数を占める2型糖尿病では、血糖値が高くても当分の間、ほとんどなにも起こりません。なにかが起こるとき、つまり、自分で自分のからだの異常に気付くときは、「合併症」(高血糖で引き起こされる全身の余病)がかなり進行してしまったときです。
糖尿病の合併症は全身のいろいろな所に現れてきます。合併症の症状が現れてからでは、医学が進歩した現代でも治療に苦労することが少なくありません。ですから、そのような事態を防ぐために、自覚症状のあるなしに関係なく、治療を急がなくてはいけません。
血糖値を健康な人に近い状態にしておくほど(良い血糖コントロールを維持するほど)、間違いなく、合併症が起きにくくなります。ただし、本来、糖尿病の高血糖そのものには自覚症状がないのですから、治療を行っていてもそれが本当に効果をあげているかどうかは、自分ではわかりません。検査が必要です。検査によって、良い血糖コントロールを維持できているかどうかを調べることが大切です。
糖尿病の治療において検査が重要な理由をおわかりいただけたでしょうか? このコーナーでは、血糖コントロールの指標としての検査について、詳しく解説していきます。
シリーズ第1回目の今回は、血糖コントロールの指標(めやす)として用いられている主な検査を一つずつ取り上げ、その意味や数値を解釈するときの注意点などをお話ししていきます。
まずは血糖値です。
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◇ 検査方法 | : | 採血*1 |
◇ 意 味 | : | 血液の中の糖(ブドウ糖)の濃さ |
◇ 単 位 | : | mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル) |
◇ 基 準 値 | : | 空腹時;110未満*2 |
75gのブドウ糖を飲んだ2時間後;140未満 |
◇ 特 徴 | : | 採血した瞬間の血糖レベルが正確にわかります |
◇ 注 意 点 | : | 採血時以外の血糖レベルは把握できません |
*1 患者さん自身で微量採血し血糖値を測る方法(血糖自己測定)もあります
*2 特定健診における基準値の上限は100です |
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冒頭で述べたように、糖尿病は「血糖値が高くなる病気」ですから、ある人が糖尿病かそうでないかを診断するには血糖値を測ります。また、糖尿病の患者さんの病状を把握するときにも、血糖検査が欠かせません。血糖検査は糖尿病で最も基本的な検査です。
改めていうまでもありませんが、血糖とは「血液中の糖」、より正確には「血液中のブドウ糖」のことです。つまり血糖値とは、血液の中に含まれているブドウ糖の濃さ(濃度)を表す検査値です。ですからその単位は「mg/dL(ミリグラム・パー・デシリットル)」で、血液1dL 中にブドウ糖が何 mg 含まれているかを表します。
ところで、血糖はどのように作られ、何に使われているのでしょうか。ここで、からだの中での'糖利用のありさま'を簡単にお話しします。
主として食後の血液中のブドウ糖(=血糖)の原料は、食べ物の中の炭水化物です。炭水化物が胃腸で消化吸収されることで、ブドウ糖となり血液中に供給され「血糖」となります。
ですから食事をとると、少し血糖値が上がります。そして血糖は全身の細胞のエネルギー源として使われます。エネルギーとして使われずに余った分は肝臓・筋肉・脂肪細胞に貯蓄されます。
食後2〜3時間たつと血糖値は食事の前の値に戻ります。それから次の食事を食べるまでの間は、肝臓から少しずつブドウ糖が血液の中に放出され、全身の活動に必要なだけの適切な血糖レベルが維持されます。
このように、からだの中ではいつも血糖値が一定の範囲内に収まるようにコントロールされています。そのコントロールになくてはならないのが、すい臓で作られる「インスリン」というホルモンです。
血糖が全身の細胞に入りエネルギー源として使われるときにも、余った血糖を肝臓に溜めるときにも、また、肝臓から血液中に放出される血糖の量を適度に調節するのにも、インスリンの助けが必要です。
糖尿病で血糖値が高くなるのは、このインスリンの働きが弱くなるためです。インスリンの働きが弱いために、食後に血糖がなかなか細胞に取り込まれず、肝臓への貯蓄にも時間がかかり、加えて、血糖値が高いにもかかわらず肝臓から血糖の放出が止まらないために、いつまでも高血糖が続いてしまう病気、それが糖尿病です。
空腹時血糖値および 75g OGTT による判定区分と判定基準 |
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〔日本糖尿病学会 糖尿病診断基準検討委員会:糖尿病の分類と診
断基準に関する委員会報告.糖尿病 42(5):385〜401,1999〕 |
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血糖値の基準値は、空腹時は110未満
※、75gのブドウ糖溶液を飲んだ2時間後(日常生活においては食事の2時間後)は140未満です。基準値が空腹時と食後の二つの条件で定められているのは、ここまでの解説でおわかりのとおり、血糖値は常に変化する検査値だからです。健康な人でも、食事の前の最も低いときと食後の最も高いときとでは、2倍近くの差がありますし、糖尿病の患者さんの場合はそれ以上に大きく変化していることもあります。
※ | 糖尿病の予備群という側面もあるメタボリックシンドロームの抑制のためにスタートした「特定検診・特定保健指導」では、その目的から、空腹時血糖の基準値が糖尿病の診断基準よりも低く(厳しく)設定されていて、100未満です。 |
d.血糖の瞬間値は正確にわかる反面、
ある期間の血糖レベルのあらましはわかりにくい
患者さんが血糖検査を受け、仮にある時点の結果があまり高くなかったとしても、それだけでは「しっかり治療できている」ということはできません。血糖検査では、採血をした時点での血糖レベルは非常に正確にわかりますが、ふだん血糖値がどのくらいのレベルで推移していたかがわからないからです。
そこで、次から解説する HbA1Cなどの、検査時点から過去に遡り一定期間の血糖レベルを調べられる検査が必要になるわけです。
血糖コントロールの一般的な目安を表に示しておきます。
血糖コントロールの目安 |
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〔日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 第2版.南江堂.19,2007〕 * 旭化成ファーマ(株) 社内資料 |
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a.血糖と結合して変化したヘモグロビンの割合を示す検査
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◇ 検査方法 | : | 採血 |
◇ 意 味 | : | 血色素(ヘモグロビン。Hb)のうち、血糖と結合して変化したもの(A1C)が占める割合 |
◇ 単 位 | : | %(パーセント) |
◇ 基 準 値 | : | 4.3 〜5.8 *(高血糖が続いていると数値が高くなる) |
◇ 特 徴 | : | 検査時点から過去1〜2カ月間の血糖レベルの平均がわかります |
◇ 注 意 点 | : | 血糖レベルの短期的な変化や食後の高血糖を見付けにくい点に注意が必要です
また、透析療法中など、実際の血糖状態からずれた結果が出るケースもあります |
* 特定健診における基準値の上限は5.2%です |
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血液中のヘモグロビンにブドウ糖が結合してグリコヘモグロビン(HbA1C)になる |
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HbA1Cの量÷HbA1Cを含むヘモグロビンの総量×100=HbA1C値 |
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まず、HbA1Cの読み方ですが、ヘモグロビン・エーワンシー、またはグリコヘモグロビンといったり、あるいはアルファベットをそのままエイチビーエーワンシーと読むこともあります。「Hb」がヘモグロビンのことです。
ヘモグロビンは赤血球の成分で、肺で酸素と結合し全身に酸素を送り届ける役目を果たしています。ヘモグロビンが少ないと貧血となり、脳に酸素が十分に供給されません。そのため HbA1Cが貧血の検査だと勘違いされることもあるのですが、そうではなく、糖尿病の検査です。
ヘモクロビンは血液の中を流れているうちに、少しずつ血糖と結合していきます。血糖と結合したヘモクロビンのことを「糖化(グリコ)ヘモクロビン」といいます。それがヘモグロビン・エーワンシー、つまり HbA1Cです。
HbA1C検査は、ヘモクロビン(Hb)の中で A1Cがどのくらいの割合を占めているかをパーセントで表す検査です。このパーセントが高ければ高いほど、血糖値がより高い状態が続いていたために、ヘモグロビンと血糖が結合する頻度が増えたのか、血糖値の高い時間が長かったのだと判断できます。
ちなみに日本語ではヘモグロビンを血色素といいます。血液の赤い色はヘモグロビンの色です。
b.採血時から過去1〜2カ月間の血糖レベルの平均と相関
HbA1C検査は採血時点の血糖値に左右されず、過去に遡って血糖レベルを調べられる優れた検査です。検査結果に反映されるのは、採血時点から過去1〜2カ月間の血糖状態です。
仮に採血時点の血糖値が低くても、HbA1Cが高ければ、少なくとも過去1〜2カ月間の治療が十分でなく、血糖値が高めで推移していたことがわかります。反対に、血糖値が高くてもHbA1Cが低ければ、ふだんは血糖値をよくコントロールできていたのに、採血した時点では、たまたま高血糖になっていたと考えられます。
基準値は 4.3 〜5.8%です。HbA1Cによる血糖コントロールの一般的な目安を表に示しておきます。
なお、メタボリックシンドローム抑制のための「特定検診・特定保健指導」では、その目的から基準値がより低く(厳しく)設定されていて、5.2 %が上限です。
血糖コントロールの目安 |
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〔日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 第2版.南江堂.19,2007〕 * 旭化成ファーマ(株) 社内資料 |
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HbA1C検査は血糖検査ではわからない、治療に必要な多くの情報を提供してくれる素晴らしい検査ですが、結果をみるときに少し注意が必要な点もありますので、それをまとめておきます。
・血糖状態の急な変化を把握しにくい
過去1〜2カ月間の血糖レベルの平均がわかるという長所は、見方を変えると、血糖コントロールが改善したり悪化しても、それが検査値の変化となって現れるのに時間がかかるという短所にもなり得ます。
ですから、食事療法や運動療法に力を入れても、その結果が数値に現れるまでに月単位の時間がかかり、その間は本当に効果的な食事・運動療法ができているのかどうかがわかりません。同じことは薬物療法についてもいえ、飲み薬やインスリン注射を始めたり、その種類や量を変更しても、なかなかその効果を確認できません。
「血糖コントロール状態がわかるまで時間がかかる」というこの短所に最も注意しなければならないのは、女性の妊娠期間中です。糖尿病の女性が母子ともに健康な状態で出産するには、血糖値を極めて厳格に(糖尿病でない人と同レベルに)コントロールする必要があります。仮に血糖コントロールが不十分だとして、それが1〜2カ月後にならないとわからないのでは支障があるわけです。
・食後の高血糖が反映されにくい
また、HbA1Cは食後の短時間の高血糖があまり反映されない傾向があります。
近年、糖尿病の合併症の一つであり心臓病や脳卒中の原因である「動脈硬化」は、空腹時の血糖値よりも食後の血糖値とのほうがより密接な相関関係があることがわかり、今日、糖尿病の初期から食後高血糖を積極的に治療するようになってきています。そのような先進的な治療を行うとき、HbA1Cだけでは病状の把握が不十分になる可能性があります。
・実際の血糖状態とはかけはなれた結果になることがある
血糖値を良くコントロールできているのに HbA
1C値が高くなったり、その反対になるケースもあります。
〈本来の血糖コントロール状態に比べて
HbA1C値が高くなるケース〉
腎不全(尿毒症)/アスピリンの大量服用/アルコール中毒/異常ヘモグロビン血症
〈本来の血糖コントロール状態に比べて
HbA1C値が低くなるケース〉
貧血(溶血性貧血)/エリスロポエチン製剤の投与/透析療法/肝硬変(脾機能亢進)/異常ヘモグロビン血症
a.血糖と結合して変化したタンパク質の割合を示す検査
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◇ 検査方法 | : | 採血 |
◇ 意 味 | : | 血液中の蛋白質「アルブミン」のうち、血糖と結合して変化したものが占める割合 |
◇ 単 位 | : | %(パーセント) |
◇ 基 準 値 | : | 11〜16%(高血糖が続いていると数値が高くなる) |
◇ 特 徴 | : | 検査時点から過去1カ月(とくに直近の2週間)の血糖レベルの平均がわかります |
◇ 注 意 点 | : | ネフローゼ症候群(腎機能障害の一種)など、実際の血糖状態からずれた結果が出るケースがあります |
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血液中のアルブミンにブドウ糖が結合してグリコアルブミン(GA)になる |
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グリコアルブミンの量÷グリコアルブミンを含むアルブミンの総量×100=グリコアルブミン値 |
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さきほど、HbA1C(ヘモグロビン・エーワンシー)のことを「グリコ(糖化)ヘモクロビン」と呼ぶこともあるとお話ししました。「グリコ」とは、物質が糖と結合して「糖化」したことを表す言葉なのです。ということで、「グリコアルブミン」は「アルブミン」が糖化したものだということがおわかりになると思います。
では、「アルブミン」とは何かということになりますが、アルブミンとはタンパク質の一種で、血液中のタンパク質の大半を占めています。このアルブミンも、血液の中を流れているうちに少しずつ血糖と結合していきます。そして「グリコアルブミン(GA)」に変わります。
血液中のすべてのアルブミンのうちグリコアルブミンがどのくらいの割合を占めているかをパーセントで表す検査が、グリコアルブミン検査です。基準値は11〜16%です。結果がこれより高ければ高いほど、血糖値がより高い状態が続いていたために、アルブミンと血糖が結合する頻度が増えたのか、血糖値の高い時間が長かったのだと判断できます。
グリコアルブミンによる血糖コントロールの一般的な目安を表に示します。
血糖コントロールの目安 |
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〔日本糖尿病学会:科学的根拠に基づく糖尿病診療ガイドライン 第2版.南江堂.19,2007〕 * 旭化成ファーマ(株) 社内資料 |
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b.採血時から過去1カ月間(とくに直近の2週間)の血糖レベルの平均と相関
グリコアルブミン検査もHbA1Cと同様に、採血時点の血糖値に左右されず血糖レベルを過去に遡って調べられる検査です。ただし、検査結果に反映されるのは採血時点から過去1カ月間(とくに直近の2週間)と、HbA1Cよりも少し短いことが特徴です。
このため、HbA1C検査ではわかりにくい比較的短期間に起きた血糖レベルの変化を知ることができます。それにより、食事療法や運動療法の効果をすぐに実感できますし、飲み薬やインスリン注射を始めた際や、その種類や量を変更した際にも、すぐに効果を判断できます。妊娠期間中の厳格な血糖コントロールにも役立ちますし、食後の高血糖も反映されやすいという利点もあります。また、透析患者さんでも検査値への影響がより少ないことがわかっています。
このような、グリコアルブミン検査が適しているケースについて、このシリーズの第2回目以降で解説していく予定です。
グリコアルブミン検査も、他の検査ではわからない多くの情報を提供してくれる素晴らしい検査ですが、結果をみるときに少し注意が必要な点もあります。
・実際の血糖状態とはかけはなれた結果になることがある
血糖値を良くコントロールできているのにグリコアルブミン値が高くなったり、その反対になるケースもあります。
〈本来の血糖コントロール状態に比べて
グリコアルブミン値が高くなるケース〉
〈本来の血糖コントロール状態に比べて
グリコアルブミン値が低くなるケース〉
5.1,5−AG(1,5-アンヒドログルシトール)
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◇ 検査方法 | : | 採血 |
◇ 意 味 | : | 尿糖と一緒に排泄される1,5-AGという物質の、血液中の濃さ |
◇ 単 位 | : | μg/mL(マイクログラム・パー・ミリリットル) |
◇ 基 準 値 | : | 14μg/mL 以上(高血糖が続いていると数値が低くなる) |
◇ 特 徴 | : | 検査時点から過去数日間の血糖レベルがわかります |
◇ 注 意 点 | : | 妊娠中や腎機能が低下している場合など、実際の血糖状態からずれた結果が出るケースがあります |
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1,5-AG は、イチ・ゴ・エージー、または、イチ・ゴ・アンヒドログルシトールと呼びます。1,5-AGは食品に含まれている物質ですが、栄養素としての役割はないと考えられていて、一度からだに吸収されたあと、そのまま尿に混ざって排泄されます。
尿の中に排泄される1,5-AG の量は、尿糖レベルと相関関係があり、尿糖(尿中にあふれて出てくるブドウ糖)が多いほど1,5-AG もたくさん排泄されます。ですから血液中の1,5-AG は、尿糖が排泄されるに従い減ってきます。つまり、血糖値が高いほど1,5-AG 検査の数値は低くなるということで、今まで述べた HbA1Cやグリコアルブミンとは反対に、「数値が低いほど良くない」検査です。
前の二つの検査と同様に、1,5-AG 検査も採血時点の血糖値に左右されず、血糖レベルを過去に遡って調べられます。ただし、結果に反映されるのは採血時点から過去数日間と、より短いことが特徴です。
このため、治療法を変更した際に、グリコアルブミンよりもさらに早くその効果を確認できるという利点があります。また、尿糖の排泄量に伴い数値が下がるという仕組みから、食後だけ高血糖になっているケースなど、病状が比較的軽度の時点から、より敏感に反応が現れます。
1,5-AG検査も、他の検査を補う多くの情報を提供してくれる検査ですが、やはり注意点もあります。
・短期間の血糖コントロール状態しかわからない
過去数日間の血糖レベルをより正確に把握できるという長所は、見方を変えると、こまめに検査しなければ血糖コントロール状態を把握できない期間が生じてしまうという短所にもなり得ます。
・血糖コントロールが悪いと数値の差が少なくなる
1,5-AG は軽度の高血糖に敏感に反応する反面、血糖コントロールが非常に悪い場合は検査結果の差が少なくなって、病状を評価しにくくなります。
・実際の血糖状態とはかけはなれた結果になることがある
血糖値を良くコントロールできているのに1,5-AG 値が低くなったり、その反対になるケースもあります。
〈本来の血糖コントロール状態に比べて
1,5-AG 値が低くなるケース〉
〈本来の血糖コントロール状態に比べて
1,5-AG 値が高くなるケース〉
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◇ 検査方法 | : | 採尿(コップに尿をとり、試験紙を浸す)* |
◇ 意 味 | : | 尿の中に糖(ブドウ糖)が混ざっているか否か |
◇ 単 位 | : | ―(試験紙の色の変化で陰性か陽性かと、陽性の場合のその程度を判定。数値化はされない* ) |
◇ 基 準 | : | 陰性 |
◇ 特 徴 | : | 測定方法が簡単で、家庭でも測れます |
◇ 注 意 点 | : | 血糖レベルを大雑把にしか把握できません
また、陰性でも高血糖でないとはいえません |
* 試験紙ではなく、尿糖レベルをデジタル計測し、数値で評価できる尿糖計もあります |
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尿糖検査はここまで解説してきた検査と異なり、採血が不要で、ご家庭内でも手軽に測れます。ただし血糖レベルを正確に知ることはできません。尿に試験紙を浸し、その色の変化をみて、尿糖が陰性か陽性か、陽性の場合はその程度を判定します。測定結果に反映されるのは、前回トイレに行ったあとから今回測定するまでの間(通常は採尿前の過去数時間)の血糖値の推移です。
なお、試験紙ではなく、尿糖レベルを数値で評価できるデジタル尿糖計の場合は、尿糖の量をより正確に把握できます。
b.基準は「陰性」。ただし高血糖でも陰性のことがある
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「尿糖が陰性=糖尿病ではない」とはいえない |
尿糖は血液中の余分なブドウ糖が尿の中に排泄されたものです。血糖値が高いときは尿糖が陽性になります。健康であれば(血糖値が正常であれば)尿糖は出ません。ですから尿糖は「陰性」が基準です。
ただし、血糖値が少し高いくらいのときも尿糖は出ず、陰性のままです。つまり、尿糖が陰性だからといって「高血糖ではない」とはいえないということです。
また、血糖値は高くないのに尿糖が陽性になったり、その反対になるケースもあります。
〈血糖値は高くないのに
尿糖陽性になりやすくなるケース〉
〈血糖値が高いのに
尿糖陰性になりやすくなるケース〉
ビタミンCの大量摂取/腎機能低下/尿ケトン体が陽性/L-DOPA(パーキンソン病の薬)の服用
血糖コントロールの指標となる主な検査について解説してきました。それぞれの検査に、優れた点と注意すべき点があることがおわかりになったのではないかと思います。
今、糖尿病の患者数が急増し、いろいろな背景をもった患者さんが増えてきています。ひとくちに糖尿病といってもその病状は患者さん個々で異なります。また近年、新しい薬が開発され、それぞれの患者さんにより適した治療法が選択されるようになりました。それとともに、血糖コントロールの検査指標を使い分ける必要性が、以前に増して高まってきています。
糖尿病の治療に必要な情報のすべてが一度にわかる検査というのは、ありません。それぞれの検査の長所・短所を見極めて使い分けることで、血糖コントロールに役立つ指標となるのです。
そんな中でこのコーナーでは、次回以降グリコアルブミンに的を絞り、グリコアルブミン検査がより有効なケースをいくつか紹介していきます。
検査の種類ごとに、血糖コントロール状態が反映される期間が異なります |
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第2回「糖尿病の薬物療法と血糖コントロール」へ
第3回「食後高血糖と動脈硬化。動脈硬化とグリコアルブミン」へ
第4回「妊婦さんや透析患者さんの血糖コントロール」へ
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