〔このコーナーは医療スタッフ対象です〕 ドクター訪問 こう使う! グリコアルブミン検査の活用例

 ここでは、グリコアルブミン検査を導入して質の高い糖尿病診療を実践している実地医家を訪問し、その活用法をおたずねしていきます。


第1回野木病院 内科富永 真琴 先生
click here「グリコアルブミン検査で医療の質・安全性と患者さんの安心感が増します」

第2回那珂記念クリニック遅野井 健 先生
click here「安全、安心のためにすべての患者さんのHbA1CとGAを測定しています」

第3回船山内科船山 秀昭 先生
Watching「新患でインクレチン関連薬を処方する場合は、GAを必ず測定しています」


第3回 船山内科 院長 船山 秀昭 先生

「新患でインクレチン関連薬を処方する場合は、GAを必ず測定しています」
 地下鉄「門前仲町」駅からほど近い東京・下町。富岡八幡宮の門前町として栄えた江戸の面影をほのかに残すこの地に開業して28年。地域に根付き、約1,000人の糖尿病患者さんをお一人で診られている船山先生に、グリコアルブミンをどう使うべきか、実地医家の視点から語っていただいた。

どのようなケースでグリコアルブミン(GA)を測定されますか?

 大きく分けると二つのケースがあります。(1) 血糖変動が大きい場合と、(2) 安心・安全が求められる場合です。

 前者の「(1) 血糖変動が大きい場合は、さらに二つに分けることができます。

 一つ目は、1型糖尿病の患者さんです。当院では約1,000人の糖尿病患者さんを診ていますが、そのうち70人ほどが1型の患者さんです。

 以前、私は当院の患者さんのデータから、インスリン療法下ではGA/HbA1c比が有意に高い、つまり、インスリンを用いた治療では HbA1cが相対的に低値になることを見出だし、糖尿病学会誌に発表しました。そのとき、ことに HbA1cが良好な患者さんほど、その傾向が強く現れることがわかりました。

HbA1cとGAの乖離について(コラム 1)

 インスリン療法の患者さんの中でもとくに、1型の患者さんは血糖値の日内変動が大きいと考えられます。ですから HbA1cではその日内変動をとらえきれないのです。

 1型は若い方が多いので、より厳格なコントロールが求められます。HbA1cだけではコントロール不十分な状態を見逃してしまうかもしれません。このようなとき、GAを測定することで、実際の血糖変動を正確に把握できます。幸い1型の患者さんでは血糖マーカーを月2回まで保険測定できますので、HbA1cの弱点をカバーしています。

診療報酬について(コラム 2)

 GAを測定する二つ目のケースは、経口血糖降下薬やインスリンを使い始めてから6カ月以内までです。HbA1cには採血時から過去1〜2カ月間の血糖状態が反映されるので、薬物療法開始後にその効果が十分であるか否かを判断するのに少し時間を要します。GAであれば、過去4週間、とくに直近の2週間の血糖状態が反映され、処方変更の必要性を早めに判断できます。「薬物療法開始後6カ月間」というのも、血糖マーカーを月2回算定できる条件として認められています。

 なお、経口血糖降下薬の中でもα-グルコシダーゼ阻害薬やグリニド薬は、食後血糖を改善し日内変動を抑制する薬ですので、GAによる評価がより好ましいと考えています。同じ意味で、インクレチン関連薬もGA測定が適していると思います。

 後者の「(2) 安心・安全が求められる場合は、さらに三つに分けることができます。

 その一つ目は、HbA1cが血糖状態から乖離することが明らかな併発症がある場合です。例えば貧血です。貧血ではその原因や治療によって、HbA1cが低くなるケースと高くなるケースがあり、HbA1cによる評価が難しくなります。貧血以外にも HbA1cの解釈に注意が必要なケースとして、肝硬変や透析療法が挙げられます。

 具体的な例として、当院の患者さんの中から、貧血および透析によって HbA1cが血糖状態から乖離し、GAでの管理が必要な例を示します。このようなケースでは、HbA1cではなくGAで血糖管理していくことになるでしょう。

症例提示

 二つ目は、とくにこれといった理由がないのにもかかわらず、HbA1cの数値に疑問を感じたときです。例えば、ふだんの随時血糖が高いわりに HbA1cが低いとか、HbA1cが良いのに合併症が進みつつあるとか、そういったケースでGAを測ります。

 私は以前、球状赤血球症による不顕性溶血のために HbA1cが異常低値を示していて、合併症が進行する理由がなかなかわからず難渋した経験があります。仮に今、同じ症例に出会ったならすぐにGAを測り治療を強化することでしょう。

 最後の三つ目は、糖尿病の疑いがある新患と、糖尿病以外の疾患で治療中の患者さんで新たに糖尿病の疑いが生じた場合です。糖尿病発症直後で HbA1cにはまだ変化がない時期であっても、GAは高値を示していると考えられます。

いろいろなケースでGA測定が求められるのですね。しかし二つ目の HbA1cの数値に疑問を感じたケースは血糖管理マーカーを月2回測定することになり、保険診療では難しくないでしょうか。どのようにされているのでしょう?

 HbA1cとGAをそれぞれ隔月で交互に測定しています。GAの値は報告されている換算式〔GA×0.245+1.73=HbA1c〕で HbA1c値に置き換え、継続的に管理しています。

HbA1cやGAは院内で迅速診断されているのでしょうか?

 HbA1cをどうしても当日に知る必要がある例に限り、免疫法により行っていますが、大部分は外に出しています。機器の設置スペースやデータ入力の問題がありますから、クリニックレベルでの迅速診断は、一般的には難しいのではないでしょうか。

 私は患者さんに「今日の検査の結果を楽しみにしていてください。血糖は今一つでしたが、HbA1c(またはGA)はいいかもしれませんよ」といった具合にお話しし、希望をもって帰っていただくようにしています。

患者さんの笑顔が目に浮かぶような、温かい診察風景ですね。

「検査結果がその日のうちにわからないほうがいい」と言う患者さんもいらっしゃいます。

 検査を外注していると、GAのほうが HbA1cより便利な面もあります。それは生化学的検査のスピッツでオーダー可能だという点です。例えば、糖尿病でない患者さんが受診され採血・採尿をします。HbA1cは必要ないので血液学的検査はオーダーしなかったとします。ところが後から尿糖が出ていることがわかり慌てるということもあります。そのようなとき、GAであれば追加でオーダーできるわけです。

糖尿病がこれだけ増えてくると、糖尿病以外の患者さんが糖代謝異常を併発していて、患者さんご自身が気付いていないことも多いでしょうから、すぐに追加オーダーできるというのは結構大切なポイントかもしれませんね。
 ところで、糖尿病の治療ということに話を移しますと、昨年末からインクレチン関連薬が次々に登場し、パラダイムシフトが起きるのではないかと期待されていますね。そのことで臨床検査になにか変化はあるのでしょうか?

 最初に少し述べましたように、食後血糖を改善する薬の効果を判断するには、HbA1cではなく、GAのほうが適しています。インクレチンも食後高血糖をより強く抑制しますから、GAでの評価が適していると考えています。実際に私は、インクレチンを第一選択薬として処方した患者さんはGAで継続管理しています。今、そのデータをまとめているところです。もう少しすれば、インクレチン治療におけるGAの有用性を報告できるのではないかと思います。

GA測定の有用性、今後の可能性をいろいろお話しいただきました。しかし実臨床にはまだGAが十分浸透していないように思います。なにがネックになっているのでしょうか?

 保険診療上の制限があることとともに、HbA1cに比べるとGAはまだエビデンスが少ないということではないでしょうか。HbA1cのような「優・良・可・不可」という周知されたコントロールの目安がないために、使い慣れていないと臨床像をイメージしにくいのではないかと思います。

最後に、GA未導入のドクターへメッセージを。

 

 血糖と HbA1c、臨床経過をみていて、どうもおかしいなと感じたら、すぐにGAを測っていただきたいと思います。それと、1型の場合ですね。1型糖尿病の患者さんは経験上、血糖変動のバラツキが大きいですから、GAを必須ということにしてもよいと思います。

(取材日:2010年3月15日)


●まとめ
どんなときにGAを測るか――
 
(1) 血糖変動が大きい場合
  ・1型糖尿病の患者さん
  ・経口血糖降下薬やインスリンを使い始めてから6カ月以内
(2) 安心・安全が求められる場合
  ・HbA1cが血糖状態から乖離する併発症がある場合
  ・HbA1c値に疑問を感じたとき
  ・新患または糖尿病以外の患者さんで、糖尿病を疑ったとき
治療薬との関係は――
 
  • 食後高血糖改善薬の評価にはGAが適している
  • インクレチン関連薬で治療をスタートした新患はGAで管理中
  • 保険請求は――
     
  • 月2回の算定が認められているケースでは、両方請求する
  • HbA1cよりもGAが適しているケースでは、GAのみで管理
  • HbA1cとGAの両方が必要なときには隔月で交互に測定する

  • ●取材を終えて ――
     長年、全国臨床糖尿病医会の理事のほか多数の学会の要職を務められ、実地医家の立場から糖尿病診療レベルの向上に貢献されている船山先生。「状態が安定している患者さんは2カ月に1回の採血で管理しています。たとえ保険でそれ以上の算定が認められていても、患者さんに負担をかけますから」。その朴訥な口調には、近年声高に叫ばれる「患者中心の医療」を糖尿病エキスパートとして当然のように実践してきた自信や信念がうかがえます。GAについても、患者さんのメリットを考え、有用性をしっかり判断したうえで測定し、治療に生かしていらっしゃるようです。


    ※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。