※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。
〔このコーナーは医療スタッフ対象です〕 ドクター訪問 こう使う! グリコアルブミン検査の活用例

 ここでは、グリコアルブミン検査を導入して質の高い糖尿病診療を実践している実地医家を訪問し、その活用法をおたずねしていきます。


第1回野木病院 内科富永 真琴 先生
Watching「グリコアルブミン検査で医療の質・安全性と患者さんの安心感が増します」

第2回那珂記念クリニック遅野井 健 先生
click here「安全、安心のためにすべての患者さんのHbA1CとGAを測定しています」

第3回船山内科船山 秀昭 先生
click here「新患でインクレチン関連薬を処方する場合は、GAを必ず測定しています」


第1回 野木病院 内科 富永 真琴 先生
「グリコアルブミン検査で医療の質・安全性と患者さんの安心感が増す」
 山形大学医学部臨床検査医学講座(現:液性病態診断医学講座)の教授を努め、HbA1cの標準化や診断基準の改訂、舟形スタディなど、糖尿病治療を大きく進歩させる業績を築いてきた富永先生。現在も地域の中核病院で、HbA1cとグリコアルブミン(GA)を併用しつつ、質の高い糖尿病診療を続けられている。
糖尿病診療にGAを導入されているとのことですが、その狙いは?

 質の高い糖尿病治療を目指すとき、過去の平均血糖値をみるという点で HbA1Cがすぐれた指標となることは間違いないでしょう。しかし、血糖値との乖離があることを念頭に置かず HbA1Cを金科玉条のようにとらえていると、判断を誤る場合があります。その誤りを防ぐために代替指標としてGAが必須と考え、診療に取り入れています。

どんなときにGAをオーダーしますか?

 三つのケースがあります。

 、HbA1Cが過去の血糖値を反映しておらず、GAのほうが明らかに病態を正確にとらえられるケースです。そのような場合はGAのみを測定し HbA1Cはみていません。例えば肝硬変や溶血性貧血、透析治療中、あるいはエリスロポエチン投与中などです。これら以外にも当院ではまだ経験していませんが、妊婦さんの血糖管理にもGAが第一選択だと考えています。

 治療開始後または処方変更後しばらくの間、血糖値が急速に改善するであろうときです。このようなとき、HbA1Cはゆっくりとしか下がってこないので、実際に血糖状態が良くなっているかどうかを確かめるのに時間がかかります。それに対してGAは下がり具合が非常によくわかるため、安心して治療にあたれます。例えば患者さんの血糖値が比較的高く速やかに改善したいとき、初診時の処方をそのまま継続するだけでよいか否かを2週間後には判断できます(症例1症例2参照)。また、治療効果が素早くわかるという点は、われわれ医療提供者だけにメリットがあるのではなく、患者さんにも安心して治療を受けていただくことにつながると思います。

 、肝硬変などの HbA1Cと血糖値が乖離する明らかな病態はないのに「何となくおかしい」というときです。事実、昨年『Diabetes Care』に掲載された、連続血糖測定(CGM)で算出した平均血糖値と HbA1Cがよく相関することを報告した論文から、平均血糖値が同一でも HbA1Cは上下約1%の範囲に分布していることがわかります(図1)。HbA1C値が腑に落ちないときGAを測ることで、各検査値がどのくらい正確に病態を反映しているのかを判断する材料が増え、その後の血糖管理になにを指標とすべきかがわかります。そのことが不必要な検査の省略につながることもあります(症例3参照)。


GAがとくに有効だった具体的な例を挙げていただけますか。

 以下の三つのケースを紹介いたします。

 

紹介いただいた3例のうち最初の2例の患者さんでは、ひと月にGAと HbA1Cの両方を測定されているようですが、保険診療でされているのですか?

 もちろん保険診療です。

 2008年度の診療報酬改定で、以前から認められていた妊娠時管理に加え、2型糖尿病でも薬物療法開始後6カ月以内の患者等は同月内で2回まで血糖関連検査を算定できるようになりました(コラム2 参照)。初診で HbA1Cが非常に高い方では月2回受診していただき、GAと HbA1C1回ずつというパターンが、ほぼルーチンになってきています。きめ細かい治療ができる環境になったのですから、質の高い診療を行い患者さんに提供したいものだと思います。

 実際には薬物療法開始後6カ月経過した患者さんでも、薬剤を追加・変更し治療を強化するために、ひと月に2回算定したいことが多々あります。その場合、レセプトにその目的や経過を詳しく書いて請求しています

血糖管理指標の診療報酬について

 

患者さんにとってGAはまだ HbA1Cほど馴染みがないのでないかと思いますが、どのように説明していますか?

 患者さんへは診察中に口頭で説明するだけでなく、行った検査の意味と基準値、および、私のコメントと今後の治療方針を記載した説明書をプリントし、毎回手渡ししていますGAを測定したときには、HbA1Cの換算値(コラム1参照)もあわせて記載します。

 当院の患者さんだけでなく、より多くの患者さんにGAを理解していただくためには、例えば『糖尿病連携手帳』にGA値の記入欄を加えるという工夫があってもよいのではないかと思っています。

2008、特定検診がスタートし、また2009年3月からは献血協力者全員にGAによる糖尿病検査を無料で行うようになりました。精査目的で来院される境界域の方が増えているのではないかと思うのですが、いかがでしょうか?

 献血で指摘されたというケースはまだありませんが、特定検診で HbA1C5.2%以上を指摘されて来院される方はいます。HbA1Cが5%台前半だと OGTT をすべきか否か非常に迷います。やっても半数近くが正常型ですから。血糖以外にリスクファクターがないのであれば、披験者の負担が大きい OGTT を全員に施行するのではなく、GAを測りそれも高い場合にだけ OGTT に進むという方法もよいのではないかと、最近考えています。

最後に、GA未導入のドクターへメッセージを。

 
 HbA1Cは登場が早かったために、すでに糖尿病の診断や合併症の進行との関連がエビデンスとして確立されているように見えます。しかし、実際には血糖変動の影を見ているに過ぎず、血糖値との乖離があることもあります。HbA1Cが良くても合併症が発症・進行してしまう症例があることもよく知られています。もちろんGAにもそういった面があります。

 CGM が臨床に普及するにはまだ相当時間がかかると思いますので、それまではいろいろな方向から血糖に光を当て、その影から血糖変動を立体視する工夫が求められます。当てる光の方角が多いほど影から得られる情報は多くなり、血糖の正体を正確にとらえることができます。日本は保険診療でそれが可能な環境にあるのですから、HbA1Cのみを治療の拠り所とするのではなく、疑問があればGAを測定し補完するという姿勢が大切だと思います。

(取材日:2009年6月1日。2011年8月 一部変更)


●まとめ
どんなときにGAを測るか――
 
(1) HbA1Cが過去の血糖値を反映していないケース
(2) 血糖値の急速な変化が予測されるとき(治療開始後、処方変更後)
(3) HbA1Cを治療の根拠とすることに不安・疑問を感じたとき
測定頻度は――
 
ひと月に HbA1CとGAを1回ずつのパターンがほぼルーチンに
GA値を測定したら HbA1C値に換算する――
 
GAの測定結果は診察室の机上パソコンで HbA1Cに換算
換算式は、HbA1C=GA×0.245+1.73
外出時などには、簡略化した計算式、HbA1C=GA÷4+1.7 で求めることも
保険請求には――
 
GA測定の必要性と経過をレセプトに詳しく記載している
GA測定のメリット――
 
確かな根拠に基づいてより適切に治療できる
また、治療効果がすぐにわかるので、患者さんにも安心感をもっていただける


●取材を終えて ――
 空腹時血糖だけでなく血糖の日内変動にも十分配慮するという今日の新しい糖尿病治療のエビデンスとして高く評価されている「舟形スタディ」を報告した富永先生。大学を離れられた今、一人ひとりの患者さんに時間をかけ、丁寧に診察されている様子がうかがえました。GA検査も、丁寧な糖尿病診療のために当然必要なことなのかもしれません。



※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。