(聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授)
3. GAの特徴
過去1か月間(特に直近の2週間)の血糖状態を反映
グリコアルブミン(glycated albumin:GA)は、グルコースと結合したアルブミンです。アルブミンの半減期がおよそ17日であることから、測定値の50%は過去17日間の血糖状態を、残りの50%はそれよりさらに過去の血糖状態を反映すると考えられます9)。検査値に反映される血糖状態の期間の長さは、HbA1cと1,5-AGの間に位置します。
基準値は11〜16%10)で、血糖値が安定した状態であればHbA1cの約3倍の値をとります11)。
基準値は11〜16%10)で、血糖値が安定した状態であればHbA1cの約3倍の値をとります11)。
血糖の改善や悪化を早期に把握できる指標
検査値に反映される血糖状態の期間がHbA1cよりも短く、かつ、アルブミンは糖化されやすいという特徴は、血糖状態の変化を早期に把握できるという利点につながります。治療介入開始後や薬剤を追加した後、たとえば2週間や1か月後に外来に訪れた時に、治療が適切であった場合には、GAでは直近2週間の変化が反映されるため、より大きな変化が認められます。逆に、なんらかの理由で血糖状態が悪化した場合にも早期に変化を見出すことができます12)。
食後血糖や血糖変動との相関関係
GAは空腹時血糖に比べて食後血糖との相関が強く、HbA1cは空腹時血糖との相関が強いことが報告されています13)。
私自身、同じHbA1c値であってもGA値が高めの患者で血糖変動が大きいという症例に、出会うことがあります。このことに興味を持ち、血糖変動とGAの関係について、CGMを用いて検討したデータを紹介したいと思います。
43名の糖尿病患者にCGMを48時間施行し、HbA1c、GA、1,5-AGとの関連を検討しました。対象の患者背景は、平均年齢61.5歳、HbA1c 8.4%(NGSP値)、GA24.1%、1,5-AG4.9μg/mLで、CGMでの平均血糖値166.5 mg/dL、標準偏差(SD)50.7 mg/dL、血糖変動幅(ΔG48hr)217.2 mg/dL、血糖値180 mg/dL超の曲線下面積(AUC>180)22.7mg/dL/48hrでした。
CGMの結果から算出される指標を目的変数とした重回帰分析の結果、GAはCGMの平均血糖値、SD、ΔG48hr、AUC>180、の4項目いずれとも有意な正の関連がみられました。その一方でHbA1cはSDを除く3項目で有意な正の関連がみられ、1,5-AGは平均血糖値とΔG48hrで有意な負の関連が認められました。さらに、GAを目的変数とした場合に、平均血糖とSDが互いに独立した関係であることが示されました。これは、HbA1cでは捉えることが難しい血糖変動をGAは捉えることを示唆していると考えています。
なお、血糖変動に敏感とされている1,5-AGが、この検討ではHbA1cと同じレベルだったのは、検討対象の平均HbA1cが8.4%とややコントロール不良であったため、1,5-AGは低値にとどまり変化が少なかったことが関係していると考えられます。14)
私自身、同じHbA1c値であってもGA値が高めの患者で血糖変動が大きいという症例に、出会うことがあります。このことに興味を持ち、血糖変動とGAの関係について、CGMを用いて検討したデータを紹介したいと思います。
43名の糖尿病患者にCGMを48時間施行し、HbA1c、GA、1,5-AGとの関連を検討しました。対象の患者背景は、平均年齢61.5歳、HbA1c 8.4%(NGSP値)、GA24.1%、1,5-AG4.9μg/mLで、CGMでの平均血糖値166.5 mg/dL、標準偏差(SD)50.7 mg/dL、血糖変動幅(ΔG48hr)217.2 mg/dL、血糖値180 mg/dL超の曲線下面積(AUC>180)22.7mg/dL/48hrでした。
CGMの結果から算出される指標を目的変数とした重回帰分析の結果、GAはCGMの平均血糖値、SD、ΔG48hr、AUC>180、の4項目いずれとも有意な正の関連がみられました。その一方でHbA1cはSDを除く3項目で有意な正の関連がみられ、1,5-AGは平均血糖値とΔG48hrで有意な負の関連が認められました。さらに、GAを目的変数とした場合に、平均血糖とSDが互いに独立した関係であることが示されました。これは、HbA1cでは捉えることが難しい血糖変動をGAは捉えることを示唆していると考えています。
なお、血糖変動に敏感とされている1,5-AGが、この検討ではHbA1cと同じレベルだったのは、検討対象の平均HbA1cが8.4%とややコントロール不良であったため、1,5-AGは低値にとどまり変化が少なかったことが関係していると考えられます。14)
留意いただきたいポイント
ここまでGAのメリットを中心に述べてきましたが、もちろんGAにも留意していただきたい点があります。HbA1cが赤血球寿命やヘモグロビン代謝に影響する因子(貧血、輸血、肝硬変、腎不全、血液透析、エリスロポエチン製剤、異常ヘモグロビン血症など)により変動するのと同様に、GAもアルブミン代謝に影響する因子(甲状腺機能亢進・低下、肝硬変、ネフローゼ、高度肥満、ステロイド剤など)によって偽低値・偽高値になる傾向があることは、十分に理解しておくべき点です15)。
Tahara Y et al., Diabetes Care 18, 1995 | |
糖尿病治療ガイド2014-2015 日本糖尿病学会編・著 p9 | |
Takahashi S et al., Endocr J 54, 2007 | |
Murai J et al., Endocr J 60, 2013 | |
Sakuma et al., Diabetol Int 2, 2011 | |
Suwa T et al., Endocr J 57, 2010 | |
Koga et al., CCA 433, 2014 |
次は ▶ ▶ 4. GAと動脈硬化 〜エビデンスを中心に〜


※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。