〔このコーナーは医療スタッフ対象です〕
循環器ドクターのためのグリコアルブミン(GA)活用法

田中 逸 先生
(聖マリアンナ医科大学 代謝・内分泌内科 教授)


目次


2. 動脈硬化性疾患抑制における血糖管理のポテンシャル
 糖尿病患者の冠動脈疾患の頻度は非糖尿病者の2〜4倍であり3,4)、動脈硬化が糖尿病の主要な合併症の一つであることは間違いありません。では、高血糖に介入することで心血管イベントが減るのかというと、脂質低下療法の効果に比べてそのエビデンスはまだ少ないのが現状です。

 「細小血管合併症は血糖管理で抑制されるのに、動脈硬化性疾患が抑制されないのは、必要とされる管理目標が細小血管症のそれよりさらに低いためではないか」との仮説のもと、心血管イベントを抑制し得る血糖閾値の探索が、今世紀に入ったあたりから活発に行われるようになりました。前述のACCORDもその一つです。

 既によく知られているようにACCORDでは血糖管理を強化しても心血管イベントは減らず、かえって総死亡が有意に増加するという結果でした。そのため試験継続が急遽中止されることになり、糖尿病の臨床に大きな衝撃を与えました5)

 ACCORDについては、管理目標に到達しなければインスリン製剤等を用いて短期間で半ば強引に血糖値を下げるという、実臨床からかけ離れた手法への批判や、頻発した低血糖が予後の悪化につながったのではないかとの指摘があります。しかし、ACCORD とほぼ同時期に発表されたADVANCE、VADT6)でも血糖管理強化による心血管イベント抑制効果は明確には示されませんでした。そしてこれらの結果が明らかになって以降、動脈硬化の進展抑制には細小血管症の抑制とは質的に異なる管理が必要であることが、強く認識されるようになりました。

 これらの新たな知見に基づき、各国の糖尿病治療ガイドラインの血糖管理目標が見直されるようになったというのが、ここ数年の糖尿病領域の世界的な潮流です。長年、血糖管理を強化する方向で進んできた糖尿病医療が、いったん踊り場に差し掛かったと言えます。

 このような背景から、糖尿病の臨床で使用頻度が増してきている血糖管理指標の一つ「グリコアルブミン」の使い方を、動脈硬化性疾患の抑制にあたられている先生方にご紹介したいと思います。
        3)Haffner SM et al., N Engl J Med 339, 1998
        4)Doi et al., Stroke 41, 2010
        Gerstein HC, et al., N Engl J Med 358, 2008
        6)Duckworth W et al., N Engl J Med 360, 2009

近年の血糖管理目標変更の流れ
 ADA(米国糖尿病学会)とEASD(欧州糖尿病学会)は2012年、HbA1c7.0%未満としていた以前の管理目標から、患者さんの個々の合併症の状態、予測余命、サポート体制を勘案して、より低いHbA1c値をめざすか、あるいは緩和するかを判断するように勧告しました7,8)。日本糖尿病学会も2013年、HbA1c値を“優・良・可・不可”と区分けし全患者一律に適用していた管理目標を、以下のように改めました。
図1 血糖コントロール目標
〔日本糖尿病学会編・著:糖尿病治療ガイド 2014-2015, P25, 文光堂, 2014より引用〕
        7)Inzucchi SE et al., Diabetes Care 35, 2012
        8)Inzucchi SE et al., Diabetologia 55, 2012

次は ▶ ▶ 3. GAの特徴

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※2012年4月からヘモグロビンA1c(HbA1c)は以前の「JDS値」に0.4を足した「NGSP値」で表わされるようになりました。過去のコンテンツの一部にはこの変更に未対応の部分があります。