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6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
2000年09月
〜オーストラリアからのメールを読んで〜

「ジェオフさんへ
 あなたが集めて送ってくださったインスリンをエチオピアとインドへ送ったことをご報告いたします。インドでは、ナガプールで医院を営んでいで、1型糖尿病と闘う若い女性に力を入れている、シャラッド・ペンセイ先生の所へ送りました。我々は、ペンセイ先生の“ドリーム・トラスト(夢を信じる)”のプログラムに向けて、約5年間インスリンを送り続けてます。
 エチオピアへは1984年以来アジス・アベバへインスリンを送り続けていますが、今回初めてエチオピアのゴンダール地区へ送りました。タンザニアとともに初の試みとなります。
 私はこのプログラムに、長期的視野で望みたいと思っています。
 我々ははっきりとした目的をもち、独立した機能を確立させて行動しています。そして、多くの国々に支持してくれる人がいます。あなたが送ってくださったインスリンによって、我々の活動の更なる発展が期待できるのです。
 ご健勝を祈ります。」

【原文 ロン・ラーブさんからジェオフさんへの手紙
Dear Geoff

just to let you know that the insulin you collected and sent to us has now been sent to Ethiopia and India.

In the case of India, it has gone to Dr Sharad Pensey who runs a clinic in Nagpur and focuses on supporting young women with Type 1 diabetes. We have been sending to his "Dream Trust" for about 5 years.
For the first time we sent insulin to the Gondar region of Ethiopia, having been sending to Addis Ababa since 1984 - in fact this was one of the first destinations, together with Tanzinia, that motivated me to become committed to this program on a long term basis.
We have a good independent well-focussed operation established and operating now, with the fantastic help of supporters in a number of countries.
As we discussed, any more insulin that you can send to us will join the effort.

All the best for now.

Kind regards

Ron Raab B.Ec.
President, Insulin For Life Incorporated Consultant at the International Diabetes Institute, Australia, on the Study of Insulin Supply, Cost and Need in Countries of Central and Eastern Europe and the Newly Independent States
Member, International Diabetes Federation Insulin Task Force Member, Declaration of the Americas Scientific and Medical Consultative Group


 これは、オーストラリアに行った時に知り合い、以来メール交換をしているロン・ラーブさんが出された手紙を、ご本人の承諾を得て日本語に意訳し転載したものです。

 ロン・ラーブさんは、6歳で1型糖尿病を発病されて、40年以上インスリンを打ち続けている患者です。メルボルンを拠点に、開発途上国の糖尿病患者にインスリンを送り届ける活動をされています。
 以前は、期限が切れて捨てていたインスリンを集めて送っていたとのことですが、現在は製薬会社などのサポートもあって、有効期限内のインスリンを送っているようです。インスリンそのものよりも、輸送費などのコストが不足していて、資金面でサポートしてくれる人(団体)を探しているようです。

 糖尿病はふつう1型2型を問わず、「血糖コントロールさえよければ健康な人と全く同じ状態で過ごすことができる病気」と表現されます。ただしこれは、日本などの先進諸国での話なのかもしれません。医師からのメッセージとして、この言葉をすべての患者へ伝えられる国は、それほど多くはないのかもしれません。
 実際に私が一昨年フィリピンで見学した病院でも、高血糖による急性合併症で入退院を繰り返す人が後を立たないとのことでした。もちろんそれは、日本で話題になることがあるような、糖尿病を理解しないままきちんと治療しないでいるからではなく、インスリンを買うお金がないためです。
 インリン依存状態にある人がインスリンを打つというのは、言うまでもないことながら、生きるための必要性という意味において「食事を摂る」ことと全く変わらないことです。それが経済的な理由でままならないということは、その患者にとっては「食べるものがない」のと同じことです。「お金があれば健康な人と同じです。お金が足りない場合は高血糖で命を落とさないくらいの治療ならできます」。こういった現実があるようでした。
 フィリピンより経済水準の低い国はたくさんありますから、世界中にはさらに厳しい状況の国もあることでしょう。

 シドニーでは今、4年に1度の祭典が開かれています。インスリン治療をしている水泳選手が出場し、話題になりました。それは、糖尿病の人でも健康な人と全く同じということを明らかに指し示す、素晴らしいことです。そして、同じオーストラリアから広がっていくロン・ラーブさんの活動、世界中の糖尿病患者にインスリンを届けること、その活動に協力し同じ趣旨の活動を行う人が世界中にたくさんいるということ、それもオリンピックの感動に負けないくらいに素晴らしいことだ思います。

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INDEX
  1. 厚生白書に見る糖尿病
  2. 糖尿病の患者数と医療費の推移
  3. 目で見る病型、病気のかたち
  4. 糖尿病食と減塩食
  5. 5分でわかる糖尿病
  6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
  7. 足がビリビリ? 神経障害
  8. 糖尿病ネットワークを担当して
  9. 『糖尿病からの帰還』を読んで
  10. 眼鏡をかけるとよく見える?
  11. 糖尿病の方が加入できる保険
  12. 糖尿病と人工透析(1999)
  13. 長時間、飛行機に乗る際に
  14. 高血糖は高血圧や高脂血症より、健康上の問題として認識されにくい
  15. インスリン誕生の地
  16. GOLD・たばこ・糖尿病
  17. 「糖尿病ネットワーク」開設5周年
  18. 食後3時間以上経過して血糖値200以上の人の頻度、ほか
  19. 超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
  20. 尿糖を調べてみよう
  21. 生活習慣病の一次予防に向けて
  22. “インスリンに頼る”という表現
  23. 民間療法
  24. 「日臨内研究2000」にみる、糖尿病性神経障害とわが国の糖尿病の実態
  25. 糖尿病の食事療法
  26. 雑感『生活エンジョイ物語』
  27. 血糖値の情報量
  28. 女性糖尿病患者はどこに?〜性差と病名について〜
  29. 気になったセールストーク
  30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
  31. 糖尿病患者として世界で初めて南極点へ到達 ウイル・クロスさん
  32. 糖尿病とたばこ
  33. 旅行者血栓症
  34. インスリン療法を続けて50年
  35. 糖尿病患者さんの年末・年始の過ごし方