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4. 糖尿病食と減塩食
2000年09月

「糖尿病食は味がしない。糖尿病食だから甘さを抑えるのはともかく、なんで塩まで減らすんだ」。
 これは、血糖値が高いといわれ、市販の糖尿病食はどんなものかと一度二度試した人の口から、たまに聞くことがある言葉です。その人はなぜ味がしないと感じたのか、ふだん濃い味付けのものばかり食べていたせいなのか、それともそのとき食べたのがたまたま薄い味付けだったのか。どちらにしても、糖尿病食はこりごりだなんて思って、食事療法に支障をきたすようなことがあっては一大事。今回は、日本人の舌に馴染み深い塩味との関係で、糖尿病食を考えてみます。

■塩と高血圧、高血圧と糖尿病

 日本食は伝統的に塩分が多く、高血圧が国民病といわれるほど患者数の多い病気で、その治療では減塩が大切。これは日本人の常識です。ところが、糖尿病の治療食はというと、一般的には糖分を控えるというイメージが先行していて、あまり減塩までは思い浮かばないのではないでしょうか。ほんとうは、糖尿病の食事療法は、適切なカロリーでバランスの良い食事をとるということで、加えて減塩もとても大切なことです。なぜなら、糖尿病の人は血圧の高い人が多く(その頻度は糖尿病でない人の2倍にのぼるといわれています)、高血圧は糖尿病の合併症の発病・進行を早めるからです。

 高血圧を防ぎ、合併症の進行を抑えるには、減塩が大きな意味をもってきます。市販の糖尿病食は、ちゃんとその辺のことを考えて味付けされているのだと思います。また、味が濃い料理はごはんが進みますから、糖尿病食事療法の大敵である食べ過ぎになりがちなことも、市販の糖尿病食が薄味に調理されている理由のひとつでしょう。家庭の料理で食事療法を進めている人も、やはり塩分には気をつけるようにしてください。

■高血圧は糖尿病性腎症の発病を早めるし、
糖尿病性腎症が起きるとそれが原因で血圧はさらにあがる

 糖尿病の三大合併症のうち、高血圧と一番深い関係にあるのは糖尿病性腎症です。糖尿病性腎症は、腎臓の中の細い血管が高血糖により障害されて、腎臓の機能が低下する病気です。糖尿病性腎症が起こると、その進行と歩調をそろえるように血圧があがってきます。腎臓の血液をろ過する力が低くなり血流量が増えることや、腎臓内の血流を保つために腎臓自身が血圧をあげるホルモンを分泌するためです。これを「腎性高血圧」といいます。  いったん高血圧になると、腎臓の中の細い血管が高い血圧により障害されて、腎臓の機能が低下します。すると、さらに血圧があがります。そこでまた腎臓の機能低下が加速されます。  このようにして糖尿病と高血圧は、相乗的に腎臓の機能を悪化させていくのです。ですから腎症を予防するため、糖尿病食は減塩食がよいのです。これは、糖尿病のタイプ(1型、2型など)に関係なくいえることです。

■腎臓以外でも、糖尿病と高血圧は同じところに合併症が起きやすい

 高血圧の合併症は、腎臓以外にも目の網膜に現われ、糖尿病性網膜症と同じような悪影響を及ぼします。動脈硬化もまた、高血圧、糖尿病に共通する合併症ですし、動脈硬化による心臓病、脳卒中も同様です。つまり、高血圧と糖尿病は病名こそ違っていても、病気の結果は同じようなことだということです。
 さらに、2型糖尿病と高血圧の原因は、過食や運動不足、それによる肥満、インスリン抵抗性、精神的ストレスなど共通する要素が多く、治療の基本となる食事療法・運動療法もほぼ同じようなことです。この点からも、糖尿病食と減塩食は全く別のものではなく、高血圧の人は減塩とともに摂取カロリーを、糖尿病の人は摂取カロリーとともに減塩を考えていく必要があることがおわかりいただけることでしょう。

■糖尿病の人は、より低めの血圧管理が必要

 今年の6月に「高血圧治療ガイドライン2000年版(日本高血圧学会)」が発行されました。このガイドラインでは高血圧患者を、脳卒中や心臓病の危険度から、低リスク、中リスク、高リスクの三つに分類しています。
 低リストは血圧が高いだけで脳卒中や心臓病の危険因子がない人、中リスクは糖尿病以外の危険因子がある人、高リスクは糖尿病、高血圧による臓器障害、心血管病変のいずれかがある人となっています。つまり、糖尿病と高血圧を併発した状態は、すでに、脳卒中や心臓病の高リスクの状態だということです。
 ガイドラインに記載されている「降圧目標」を見ると、糖尿病患者は130/85mmHg未満になっていて、これまでよくいわれていた140/90mmHgより低めに設定されています。さらに、糖尿病性腎症を伴う人はとくに厳格な血圧管理が必要とし、尿蛋白が1g/日以上の人は125/75mmHg以下が目標値とされています。

■塩がなくてもおいしい食事

 ではどうすればいいんでしょう? 「高血圧治療ガイドライン」の「治療」の項目で、一番最初にあげられているのはやはり減塩です。食塩1日7g(調味料として添加する分は4g)をめざして、少しずつ減塩を始めてみてください。一回や二回、市販の糖尿病食を試しただけで「味がない」なんていわずに、しばらくいろいろ試行錯誤してみてください。そのうちきっと、食材本来の味を生かした、とてもぜいたくな料理を楽しめるようになれるはずです。

●関連情報
  糖尿病セミナー
   「食事療法のコツ(3)腎症のある人の食事
   「糖尿病と高血圧
   「糖尿病による腎臓の病気

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INDEX
  1. 厚生白書に見る糖尿病
  2. 糖尿病の患者数と医療費の推移
  3. 目で見る病型、病気のかたち
  4. 糖尿病食と減塩食
  5. 5分でわかる糖尿病
  6. インスリンを打つということ、食事を摂るということ
  7. 足がビリビリ? 神経障害
  8. 糖尿病ネットワークを担当して
  9. 『糖尿病からの帰還』を読んで
  10. 眼鏡をかけるとよく見える?
  11. 糖尿病の方が加入できる保険
  12. 糖尿病と人工透析(1999)
  13. 長時間、飛行機に乗る際に
  14. 高血糖は高血圧や高脂血症より、健康上の問題として認識されにくい
  15. インスリン誕生の地
  16. GOLD・たばこ・糖尿病
  17. 「糖尿病ネットワーク」開設5周年
  18. 食後3時間以上経過して血糖値200以上の人の頻度、ほか
  19. 超速効型インスリンは、山を削って谷を埋める
  20. 尿糖を調べてみよう
  21. 生活習慣病の一次予防に向けて
  22. “インスリンに頼る”という表現
  23. 民間療法
  24. 「日臨内研究2000」にみる、糖尿病性神経障害とわが国の糖尿病の実態
  25. 糖尿病の食事療法
  26. 雑感『生活エンジョイ物語』
  27. 血糖値の情報量
  28. 女性糖尿病患者はどこに?〜性差と病名について〜
  29. 気になったセールストーク
  30. インスリン療法を続けて50年 第1回「リリー インスリン50年賞」表彰式
  31. 糖尿病患者として世界で初めて南極点へ到達 ウイル・クロスさん
  32. 糖尿病とたばこ
  33. 旅行者血栓症
  34. インスリン療法を続けて50年
  35. 糖尿病患者さんの年末・年始の過ごし方