日本フットケア・足病医学会で発表
佐賀大学とアサヒシューズは、足にやさしい新たなフットケアシューズを「産学医」で共同開発した。
「産学連携から生まれた次世代のフットケアシューズの開発」と題した共同発表を、2020年12月にパシフィコ横浜ノースで開催された第1回日本フットケア・足病医学会で行った。
糖尿病のフットケアがなぜ必要か
血糖値が高い状態が続くと、神経障害が進行し、その兆候は足にもあらわれる。糖尿病患者の3人に1人以上が神経障害を合併しているという報告がある。
神経障害の初期は足部の知覚障害からはじまる。進行すると運動障害に進展してしまう。神経障害が進行すると、糖尿病患者は足の異常を自分で感知しにくくなる。
そうなると、巻き爪・たこ・魚の目・ひび割れなど、足の小さな傷やケガを知らぬ間につくりやすくなり、そこから菌への感染、さらには潰瘍など重篤な状態へとつながるおそれがある。
さらに、良好な血糖コントロールを維持し、糖尿病の合併症を予防するために、運動療法が重要となる。糖尿病の運動療法でもっとも取組みやすいのはウォーキングだ。
しかし、不適切なシューズやその履き方、さらには歩き過ぎなどにより、足部に傷を創ってしまうことがあり、これは極力避けたいことだ。
産学医が連携し「メディカルシューズ」を開発するプロジェクトを開始
そこで、佐賀大学とアサヒシューズは、足を安全に守る「メディカルシューズ」を開発する研究に取り組んだ。
メディカルシューズに関する共同研究を2012年2月に開始し、佐賀大学プロジェクト研究所のメディカルシューズプロジェクト(プロジェクト長:上村哲司・同大学医学部附属病院形成外科診療教授)で、共同開発した「アサヒフットケア」シューズの試作品の臨床試験を2019年より実施。
その結果、歩行時の足底圧が、裸足や一般靴と比較し有意に減少する効果や、有害事象がみられなかったことなどを確かめた。
両者は、2020年12月にパシフィコ横浜ノースで開催された第1回日本フットケア・足病医学会年次学術集会で、「産学連携から生まれた次世代のフットケアシューズの開発」と題した共同発表を行った。
「アサヒフットケア」シューズに関する基礎検証をふまえたコンセプトや、製品機能の特徴、今後の方向性について、同学会内のセミナーで共同発表した。
足にやさしい新たなフットケアシューズを開発
糖尿病に対応したシューズについてこれまでに、医師が処方して義肢装具士が作製する靴型装具や健康靴などがある。しかし、高額なものが多く、患者からは、デザイン性、重量感、履き心地、価格の面で課題があり、日常的に使用するのが難しいという意見が聞かれるという。
また、近年は革靴以外にスニーカータイプのシューズも提案されているが、医学的な根拠に欠けるものが多い。医師やフットケアの専門家からは、「安心して患者さんに推奨できる、軽度の患者さん向けの予防用のシューズが必要」といった強い要望があった。
こうした社会的要請を受けて、佐賀大学医学部附属病院とアサヒシューズが連携し、医学的エビデンスにもとづく、足にやさしい新たなフットケアシューズを共同開発するプロジェクトに、産学医の連携で取組んだ。
「フットケアシューズ」はどこが違うか
「アサヒ フットケア」は、"靴ひもタイプ"、"ベルトタイプ"、"ストッパータイプ"が用意されている。いずれも近日発売予定。
基礎検証をふまえた主なコンセプトは次の通り――。
01 縫い目の少ないシームレス構造
靴の中で足を傷つけないよう、内部は縫い目や段差を極力なくし、フットケアの観点からあえて跡が目立つ白で統一した。靴型は足の親指に余裕のある設計にしてある。
02 足の負担を低減「やわらか設計」
クッション性が高く、負担の少ない蹴り出し。靴底には新発想の「スロープ構造(MGS)」を搭載。足への負担を取り除く機能を取り入れてある。
03 衛生的で快適なシューズ
吸湿速乾に優れ、洗濯機で丸洗いできる。靴内はこだわりのフル制菌加工(SEKオレンジマーク)。フットケアを衛生面でもサポートする。
アサヒ フットケア
資料提供:アサヒシューズ
佐賀大学医学部附属病院 形成外科
糖尿病足病変予防戦略研究所 PoPS-Lab
アサヒシューズ
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[ Terahata ]