11月14日の「世界糖尿病デー」に合わせて、各地で糖尿病教室や市民公開講座、無料の血糖測定や健康相談会、ウォーキングのイベントなどが開催された。
糖尿病とともに生きる人は一病息災
東京都糖尿病協会
東京では11月9日に、東京都糖尿病協会などの共催で、第55回糖尿病週間の市民公開講座「糖尿病・代謝疾患の克服と健康長寿の実現に向けて」が開催された。
東京都糖尿病協会会長の渥美義仁先生(永寿総合病院糖尿病臨床研究センター長)などが講演。
「糖尿病とともに生きる患者さんは、治療を適切に続けていれば、一病息災で天寿を全うできます。血糖コントロールを適切に行うことで合併症発症を減らし、医療費削減にも貢献できます」と強調した。
「糖尿病の医療は進歩しており、糖尿病合併症で亡くなる患者さんは減少してきました。ひところは、糖尿病をもつ人の寿命は10年短いなどと言われていましたが、これは過去のものになっています。適切な治療を続けていれば、合併症を予防しながら、健康な人と変わらない生活の質を維持しながら、天寿を全うすることは可能です」。
「日本では、予備群を含む糖尿病患者数は2,000万人となり、成人の4人に1人が関係する一般的な疾患となっています。これまで日本人の2型糖尿病はインスリン分泌不全が主な原因とされていましたが、現在、内臓脂肪型肥満によるインスリン抵抗性を背景とした糖尿病が増えています。HbA1cが高い患者さんから低い患者さんまで、糖尿病とともに生きる人々の条件は多彩です」。
正しい知識を身につけ治療を続ける必要が
神奈川県糖尿病協会
横浜では11月10日に、神奈川県糖尿病対策推進会議などの共催で「神奈川糖尿病デー2019 市民講演会」が開催された。当日は、神奈川県糖尿病協会会長の津村和大先生(川崎市立川崎病院糖尿病内科・内分泌内科部長)などが講演。
「糖尿病には初期の段階では、痛みなどの自覚症状がありません。食事や運動などの自己管理が必要となり、治療を怠りがちになる人も少なくありません。しかし、放置していると合併症が進行し、失明、人工透析、足壊疽、脳卒中、心筋梗塞といった深刻な事態を引き起こします。糖尿病の医療は日々進歩しています。正しい知識を身につけ、治療を続けてほしい」と呼びかけた。
神奈川県では県医師会、県糖尿病対策推進会議との連携により、「神奈川県糖尿病対策推進プログラム(かながわ糖尿病未病改善プログラム)」を2019年に策定した。
市町村の保険者や医療機関が連携し、糖尿病の重症化のリスク保有者を把握し、必要に応じた受診勧奨や保健指導を行うことで、重症化を防止したり、医療機関や地域の連携の促進により、さまざまな糖尿病合併症の予防をはかる取組みをしている。
かかりつけ医や糖尿病専門医などとの地域での連携を促進するため、「糖尿病連携手帳」の普及に取り組み、「地域連携クリティカルパス」の普及に向けたモデル事業も実施している。
インスリン治療を50年以上続けている患者を顕彰
第17回「リリー インスリン50年賞」
世界糖尿病デーに合わせて授賞式を開催
日本イーライリリーは11月4日、インスリン治療を50年以上継続している糖尿病患者に敬意をあらわし顕彰する、第17回「リリー インスリン50年賞」の授賞式を神戸で開催した。
「リリー インスリン50年賞」は、インスリン治療を50年以上継続している糖尿病患者を称えるために、米国でイーライリリー社が1974年に設立した。これまでに米国を中心に1万4,000名以上の患者が受賞している。日本でも2003年より表彰が開始され、これまでに172名の患者が受賞している。
第17回となる今年は過去最多となる30名が受賞した。50年以上にわたる糖尿病やインスリン治療の道のりを振り返りながら、糖尿病患者への励ましのメッセージを熱く語った。受賞者には、名前を刻印した銀製のメダルと、世界糖尿病デーのシンボルカラーの「青いバラ」のコサージュが贈られた。
「リリー インスリン50年賞」の受賞者は、インスリン製剤の進歩に歩調を合わせるようにして人生を歩んだといえる。受賞者がインスリン療法を開始した1960年代には、糖尿病患者は現在では考えられないような多くの困難を乗り越えなければならなかった。
50年間インスリン治療を続けるために、患者がその家族、主治医や医療スタッフと三人四脚で取り組んだ。受賞者の主治医からは「インスリン治療を頑張っていらっしゃる方、インスリン治療をこれから始めようという方に、受賞した方々のお姿を見てもらうことで、元気と勇気を感じてもらいたい」というコメントが聞かれた。
インスリン療法は50年でめざましく進歩した
インスリン療法の考え方は、インスリン注射によって体の外からインスリンを補って、健康な人の血中インスリンの変動をできるだけ忠実に再現すること。
医療の進歩により、現在、インスリン療法は取組みやすいものになっている。患者さんの病態やライフスタイルなどに合わせて、最適の治療を開始できるようになった。
しかし50年前は、速効型インスリンや中間型インスリンしかなく、現在治療に使われている使いやすいペン型注入器や、注入器とインスリン製剤が一体になったキット製剤もなかった。
インスリン療法を行っている患者は、バイアル(注射剤を入れるための容器)から製剤を吸い出して注射をした。当時の注射針は太く長く、注射には強く痛みが伴い、使用するごとに煮沸消毒が必要だった。
世界ではじめてインスリン製剤は1923年にイーライリリー社により開発された。同社が遺伝子組換えによる世界初のヒトインスリン製剤を発売したのは1982年のこと。ヒトインスリン製剤はヒトと同じアミノ酸の並び方で作られており、副作用が少ない。さらに同社は、2001年に超速効型インスリンアナログであるインスリンリスプロ(ヒューマログ)を、2005年にインスリンリスプロ混合製剤を、それぞれ日本で発売した。
現在では、健康な人のインスリン分泌パターンを再現するために、多種多様なインスリン製剤が使われている。インスリン療法は個々の病状や生活に合わせて、より安全に行える時代になった。より生理的なインスリン動態に近づけたインスリン製剤も開発されており、多くの糖尿病患者の血糖コントロールに役立てられている。
インスリン注入器も進歩している。一見すると注入器と分からないようなペン型のインスリン注入器が1990年代に使われるようになり、あらかじめインスリン製剤がセットされ、ペン型の注入器と一体になっているディスポーザブル製剤も登場し、インスリン療法の利便性は増している。
現在、注射針もきわめて細く短いものが使われており、インスリン療法を始めた患者からは「痛みを感じないので驚いた」という声がよく聞かれる。
東京都糖尿病協会
神奈川県糖尿病協会
リリー インスリン50年賞(知りたい!糖尿病)
[ Terahata ]