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2019年12月05日
赤ちゃんの血糖測定を簡単に おしゃぶり形デバイス開発で痛みもゼロに
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唾液で血糖値を確認できるおしゃぶり形のデバイスが開発された。唾液中の糖濃度を測定し血糖値に換算するもので、製品化されれば1型糖尿病乳児の血糖値を連続的かつリアルタイムでモニターすることが可能になるという。
米カリフォルニア大学サンディエゴ校(UCSD)のJuliane Sempionatto氏らの研究による成果で、詳細は米国化学会(ACS)の学術誌「Analytical Chemistry」10月1日オンライン版に掲載された。 この"ハイテクおしゃぶり"は、唾液を器械内部に取り込み、センサーに反応させて糖濃度を測定し、血糖値に換算した結果を無線で保護者や医療従事者のスマートフォンなどの情報端末に表示するという仕組み。 おしゃぶりの内部にいったん吸引された唾液は逆流しない設計になっており、乳児がおしゃぶりをくわえ続けていても、常に新たに器械に取り込んだ唾液の糖濃度をリアルタイムに測定し続ける。 プロトタイプは長さ3.6cmほどの大きさ。Sempionatto氏によると、「乳児が普通のおしゃぶりとの違いに気がついて嫌がらないよう、できる限り小さくなるようにした」という。 測定性能に関しては、1型糖尿病の成人患者が食前・食後におしゃぶりを使用するという実証実験の結果、血糖の実測値との良好な相関が確認された。ただし、それにもかかわらず、製品として市場投入するにはいくつかの課題が残されている。 課題の1つは、デバイスが小さな部品を組み合わせて構成されていること。仮に部品の一部がはずれて乳児が飲み込むと、窒息などを起こしかねない。この危険性に対応するためSempionatto氏は、すべての部品を1つの容器にまとめる必要があると述べている。 もう1つの課題は、乳児の口の中に食べ物の残渣がある場合の測定結果への影響だ。この懸念のためプロトタイプを用いた実証実験は成人患者を対象に行われた。 「成人ボランティアなら歯を磨いてからおしゃぶりをくわえるように依頼できる。しかし乳児の場合は全く異なる」とSempionatto氏は語り、乳児はしばしばミルクを吐き出すことから、口の中に残っているミルクが測定結果に影響を及ぼす可能性を指摘する。 このように未解決のハードルは存在するものの、研究者らはこのデバイスについて多くの期待を寄せている。若年性糖尿病研究財団(JDRF)のSanjoy Dutta氏は、この新技術について「非常に革新的だ」と述べている。 同氏によると、これまでにJDRFは血液採取による血糖自己測定の代替となり得る多くの新規デバイスの研究に資金を提供してきており、検体は涙、唾液、呼吸、さらにはタトゥーにも及んだという。しかし血糖自己測定ほど正確なものはまだない。 現時点において、皮下に微小なセンサーを留置し組織液の糖濃度を血糖値に換算するCGM(連続血糖測定)の精度が高いとしている。 この点について、Sempionatto氏も「1型糖尿病の患者はCGMでモニターすることが望ましい」と同意する。 しかし、おしゃぶりを用いるというアイデアは、「乳児の血糖測定を、完全に非侵襲的に行うという選択肢になり得る」と語っている。同氏は「微小のセンサー、針、デバイスでさえ新生児には大きすぎ、傷つける可能性がある。おしゃぶりは、乳児の体に装着しなくてよい」と新デバイスのメリットを強調している。 [HealthDay News 2019年11月1日]
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日本医療・健康情報研究所
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