ニュース

2019年05月21日

糖尿病とともに生きることに10人に7人が疲れている 糖尿病のメンタル支援が必要

 糖尿病とともに生きる人々の10人に7人が糖尿病の療養生活に疲れていて、メンタルヘルスの支援を必要としている。にもかかわらず、4人に3人がサポートを受けられないでいる――。英国糖尿病学会(Diabetes UK)はキャンペーンを開始した。
糖尿病とともに生きる人の多くが
「疲れている」と自覚
 英国糖尿病学会(Diabetes UK)は、糖尿病患者をメンタル面でも支援することの必要性を呼びかけ、キャンペーンを開始した。「メンタル面での健康を維持するためのサポートを、糖尿病治療の一部に含めて、すべての患者が受けられるようにするべき」と主張している。

 同学会は、英国各地に在住する2,000人以上の糖尿病患者と、1,000人以上の医師を対象に調査を行った。その結果、患者の75%が糖尿病の療養生活に疲れていて、糖尿病とともに生きなければならないという要求に圧倒されており、それが糖尿病のコントロールに影響していることを明らかにした。

 英国糖尿病学会は、英国各地の糖尿病患者と医療従事者から意見を聞き、「見失っていることは多い:糖尿病治療においてメンタル面での支援を日常的に行うことが必要」と題した調査報告をまとめた。そこでは、糖尿病治療では身体的なコンデションを管理するだけでは不十分であることが示されている。

 食事の管理や服薬の遵守、血糖値のチェックなど、糖尿病の管理は1日24時間、365日にわたり続く。これらは短期的および長期的に合併症の発症リスクを減らすために必要なことだ。糖尿病患者は常に自ら行動しなければならず、そのことが日常生活のあらゆる面に影響する。

 研究では、糖尿病のもつ容赦ない性質が、患者の感情的・精神的・心理的な健康に影響をもたらし続けていることが明らかになった。日々の療養生活による欲求不満や気分低下により、臨床的にうつ病や不安症といったメンタル面での不調におちいる患者は決して少なくない。
メンタルヘルスのサポートを必要とする人に適正な支援を
 一方で、糖尿病患者を支援するために専門的なメンタルヘルスサポートが整備されていても、患者の4分の3はそれにアクセスできていない現状も浮き彫りになった。糖尿病患者の10人中7人は、自分の感情的な幸福について、糖尿病療養チームは助けになっていないと答えている。

 調査に協力した医療従事者の多くが、この分野では行うべきことは多いと感じていることも明らかになった。具体的には、開業医は40%は日常的な糖尿病診療では、感情的な幸福や精神的な健康について患者に尋ねることは少ないと回答した。糖尿病とともに生きる人々に対する感情的および心理的支援を十分に行えていると感じているのは、わずか30%だった。

 英国糖尿病学会は今回の報告をもとに、新たにキャンペーンを開始した。糖尿病とともに生きる人々の精神的および心理的な要望を認識し、必要とする人に適正な支援を提供するために手段を探っていく。

 英国各地の保健サービスに、糖尿病のメンタルヘルスの保健サービスを提供すために基準を設けることを求めていく。糖尿病診療の一部に患者のメンタルヘルスのチェックを含め、糖尿病の知識をもつメンタルヘルス専門家が糖尿病療養チームに加わることも実現させたいとしている。
多くの患者はベストを尽くしている
 糖尿病とともに生きる人々のメンタルヘルスを脅かす原因はさまざまだ。毎日の自己管理が必要であることや、合併症への恐怖が引き起こす「糖尿病による苦痛(ディストレス)」。周囲の糖尿病に対する無理解。インスリン療法が必要であることを理解していても、それを受け入れられないでいることなど。

 糖尿病の治療が思う通りにいかず、うつ病になることも少なくない。糖尿病のある人はうつ病の発症リスクが2倍に上昇するという報告があり、うつ病が何年も続くこともある。ただし、多くのは場合は適切な治療を受ければ改善できることも分かっている。

 また、低血糖を恐れている場合には、それを防ぐ治療とともに、必要以上の恐怖を取り除くため認知行動療法などが必要となることもある。

 「糖尿病をうまくコントロールできないと、足切断、失明、腎臓病、心臓病、脳卒中などの危険な合併症のリスクが高まります。多くの患者はそのことを理解しており、感情的に奮闘しています。そのことが逆に、糖尿病の自己管理を困難にすることもあるのです」と、同学会CEOのクリス アスキュー氏は言う。
健康と身体的な健康の間の橋渡しが必要
 メンタル面でのサポートを糖尿病療養に含めることで、患者が身体的および精神的健康の両方を改善できるようになる。患者のQOL(生活の質)を向上できるだけでなく、医療費の抑制にもつながる。

 「精神的な健康と身体的な健康は密接に関係していますが、現状の治療では両者は必ずしもよく反映されているわけではありません。私たちは、糖尿病の治療と関連して感情的および精神的な問題を抱えている人たちのニーズを見落とさないようにしたい。これらの治療の間の橋渡しをすることが必要です。すべての糖尿病患者の人となりを見て、彼らにとって何が重要であるかを知り、適切にサポートすることが重要です」と、アスキュー氏は言う。

 英国糖尿病学会のキャンペーン「糖尿病治療で欠けているもの:メンタル面での糖尿病の支援」についてはサイトで詳しく紹介されている。

メンタルヘルスのサポートは見逃させている(英国糖尿病学会)
Too often missing. Making emotional and psychological support routine in diabetes care.(英国糖尿病学会)
Systematic review and meta-analysis of psychological interventions in people with diabetes and elevated diabetes-distress(Diabetic Medicine 2018年6月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

play_circle_filled 記事の二次利用について

このページの
TOPへ ▲