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2019年05月20日

1日に摂取する食品種類が多いと死亡リスクは低下 日本は食の多様性で世界2位

 1日に摂取する食品種類が多い女性では死亡リスクが低下することが、8万人の日本人を対象とした大規模な調査で明らかになった。
 名古屋学芸大学などの研究でも、食品の種類が多いと健康寿命が延びることが示されている。
多様な種類の食品を摂取している女性で死亡リスクが低下
 1日に多様な種類の食品を摂取している女性は、全死亡、循環器疾患による死亡、その他の死亡リスクが低下する傾向があることが、約8万人の日本人を対象とした大規模な調査で明らかになった。

 また、日本人は大豆製品を多く摂取するが、女性では大豆製品も摂取する種類が多いほど全死亡リスクの低下がみられた。

 「JPHC研究」は日本人を対象に、さまざまな生活習慣と、がん・2型糖尿病・脳卒中・心筋梗塞などとの関係を明らかにする目的で実施されている多目的コホート研究。

 日本を含む多くの国で、食事ガイドラインで「多様な食品を組み合わせて、食事をバランスよく摂取する」ことが推奨されている。一方で、食品摂取の多様性と死亡リスクとの関連に関しては不明の点も多い。

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大豆製品の種類が多いほど全死亡リスクが低下
 そこで、国立がん研究センターなどの研究グループは日本人を対象に、食品摂取の多様性と死亡リスクとの関連を調べた。1990年と1993年に岩手、秋田、長野、沖縄、茨城、新潟、高知、長崎、大阪の10保健所管内に在住していた40~69歳の男女約8万人を、2012年まで平均14.9年間、追跡して調査した。

 研究グループは、1日に摂取する食品数によって対象者を5つのグループに分類し、14.9年の追跡期間中に発生した死亡(全死亡、がん死亡、循環器疾患死亡、その他の死亡)との関連を調べた。

 対象者に研究開始から5年後に食事調査を実施。アルコールを除いた133項目の食品・飲料について、対象者が1日に何種類摂取しているのか算出し、その後の死亡リスクとの関連を調べた。

 その結果、女性では1日に摂取する食品の種類がもっとも多いグループでは、もっとも少ないグループに比べ、全死亡のリスクは19%、循環器疾患死亡のリスクは34%、その他の死亡のリスクは24%、それぞれ低下した。

 魚、肉、野菜、果物、大豆製品などの個別の食品群についても調査。女性では大豆製品も摂取する種類が多いほど全死亡リスクの低下がみられた。
食品摂取の多様性と死亡との関連
男性は肉類の種類が多いと全死亡のリスクが上昇
 一方、男性では食品摂取の多様性と死亡との関連はみられなかった。男性は女性に比べてアルコールの摂取頻度や喫煙率が高いため、これらの要因を統計学的に調整しても、その影響が上回り関連がみえにくくなった可能性が考えられるという。

 男性では、摂取する肉類の種類が多いほど全死亡のリスクが上昇する傾向がみられた。摂取する肉類の種類が多い人では動物性のタンパク質摂取が多くなり、このことが死亡リスクの上昇につながった可能性がある。

 なお、野菜摂取の多様性についても、全死亡リスクと関連がみられなかった。野菜は、調理されたり、その他の料理のつなぎに使われたりすることが多く、摂取する種類の算出に誤りが起きやすいことなどが原因になっている可能性がある。

 「多様な食品を摂取することは、食品や栄養に関する特別な知識がなくても実践が可能です。多様な食品をバランスよく摂取することが、全死亡リスク、循環器疾患死亡リスク、その他の死亡リスクの低下につながる可能性があります」と、研究者は述べている。
食品の種類が多いと健康寿命が延びる 日本は世界2位
 名古屋学芸大学健康・栄養研究所所長の下方浩史教授らによる、世界137ヵ国を対象とした研究でも、摂取する食品の種類が多いほど、日常生活を支障なく過ごせる「健康寿命」や「平均寿命」が延びることが示されている。

 研究は、名古屋学芸大学と同志社大学の研究グループが共同で行ったもの。

 研究グループは、国連の食物供給量のデータなどから、人口100万人以上の世界137ヵ国の食品の多様性をスコア化して計算。健康寿命は、健康でない生存年数などから推定した健康度調整平均寿命を用いて、1995~2010年の状況を解析した。

 その結果、2010年度のデータで比較すると、食品の多様性が高い国ほど健康寿命も平均寿命も長くなっていた。国民1人当たりのGDP、高齢化率、医療費、食物エネルギー供給量、教育歴を調整して比較しても、この傾向は変わらなかった。

 食品の多様性スコアは、1位 ニュージーランド、2位 日本、3位 スペイン。日本は2010年度に、食品の種類の多さは世界137ヵ国中2位で、健康寿命はもっとも長かった。
食材数の豊富さは健康で豊かな食文化を形成する
 日本は健康寿命、平均寿命ともに世界1位である一方、平均寿命と健康寿命の差である「不健康な期間」の割合は世界3番目に短かった。

 1995~2010年までの経時的なデータを使った解析でも、食品の多様性が高い国ほど健康寿命も、平均寿命も長くなっていた。また、平均寿命と健康寿命の差の割合は食品の多様性が高い国ほど短くなった。

 研究グループによると、食品の多様性の指標が0.1増加すると、健康寿命は約4年延びると推定される。

 「国や地域で供給される食材の種類が少なければ、摂取栄養素に偏りが生じやすくなります。多彩な食材を摂取することは栄養素の充足につながります」と、研究グループは述べている。

 また、「食材数の豊富さは健康で豊かな食文化を形成し、食品からのリスクの分散にもつながり、これらが疾患の予防を通して健康寿命の延伸の要因となるものと期待されます」とまとめている。

多目的コホート研究(JPHC Study) 国立がん研究センター 社会と健康研究センター 予防研究グループ
Association of dietary diversity with total mortality and major causes of mortality in the Japanese population: JPHC study(European Journal of Clinical Nutrition 2019年3月19日)
名古屋学芸大学 健康・栄養研究所
Dietary diversity and healthy life expectancy - an international comparative study(European Journal of Clinical Nutrition 2018年8月13日)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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