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2018年07月27日

「糖尿病の恐さ」は十分に知られていない 失明や足切断を防ぐために

 英国では、糖尿病のために毎週およそ30人が視力を喪失しており、毎時間に1人が足を失っている。しかし、英国人の多くが「糖尿病の恐さ」について十分に理解していないという調査結果を、英国糖尿病学会(Diabetes UK)が発表した。
 「適切な治療をすれば糖尿病合併症を予防できます。そのためには知識をもつことが必要です」とDiabetes UKは呼びかけている。
毎週30人が糖尿病のために視力を喪失
 英国の2型糖尿病のリスクの高い人の数は1,230万人。その多くは、糖尿病が深刻なダメージをもたらす破壊的な病気であることを知らないという調査を、英国糖尿病学会(Diabetes UK)が発表した。

 糖尿病の治療を適切に行っていれば、合併症を予防できる。しかし、実際には治療が遅れたり、十分な治療を行っていないために、糖尿病患者はそうでない人に比べ、早期に死亡する割合が32%高いという結果になっている。

 英国では、毎週およそ30人が糖尿病のために視力を喪失している。また、足切断の手術が毎週169回行われており、糖尿病足病変が悪化して、毎時間に1人が足を失っている。

 調査会社のウォールナット アンリミテッドが1,000人を対象に実施した調査では、糖尿病の有無に関わらず、糖尿病に対する理解が不足している現状が浮き彫りになった。脳卒中が糖尿病の合併症であることを知っていたのはわずか2%。腎臓病や腎障害については4%、心臓病については6%しか知っていなかった。

 糖尿病合併症が進行すると、失明や足切断にいたることがあるが、そのことを知っている人は4人に1人(25%)にとどまった。妊娠中に高血糖が発見される妊娠糖尿病について知っている人はわずか。糖尿病を放置していると寿命が短縮するおそれがあることを知っていたのは2%、早死のおそれがあることを知っていたのは4%だった。
糖尿病を放置すると危険 状況は深刻
 糖尿病について十分な知識をもっている人が少ない現状は深刻だ。糖尿病は、食事や運動などの生活を自分でコントロールすることが重要な病気だ。薬物療法などでも、自己管理が必要となる。自己管理を続けていくために、しっかりとした知識を習得することが必要になる。

 イングランド公衆衛生サービスの調査によると、糖尿病網膜症による失明という深刻な事態におちいる患者の数は、英国で毎年1,600人以上に上る。毎週およそ30人が糖尿病のために視力を喪失している。

 血糖コントロールをしっかりと行えば、糖尿病網膜症は予防できる。網膜症が進展して失明しないように、血糖コントロールを良好に維持すること、眼科を定期的に受診し、眼底検査を受けることが重要だ。

 また、英国では糖尿病足病変が原因で足の切断を余儀なくされる人が多い。糖尿病による足切断の手術は2014〜2017年に平均8,793回行われた。足切断の手術が毎週169回行われており、毎時間に1人が足を失っている。

 糖尿病の合併症である神経障害や血管障害などは、足の壊疽や潰瘍を引き起こす。血糖コントロールが良好でないと、壊疽は治りにくくなり、足を切断せざるをえなくなることも少なくない。さらに、高血糖の状態ではさまざまな感染症にかかりやすい。健康な人ならすぐに治るような傷が細菌感染を起こしてしまうことがある。
糖尿病合併症は予防できる
 英国では、糖尿病と診断された人の数は20年間で2倍に増えている。糖尿病は、健康状態に悪影響をもたらすもっとも深刻な病気になっている。

 しかし、重要なことは、糖尿病を発症しても適切な治療をしていれば、糖尿病合併症を予防または遅延させることができるということ。「糖尿病の合併症は、糖尿病を早期発見して適切な治療を続け、メディカルスタッフによるサポートを得て、患者教育することで防げます」と、英国糖尿病学会のCEOでサリー大学の主任研究員であるクリス アスキュー氏は言う。

 「そのために医療チームによる適切な支援が不可欠です。視力を失ったり、足を失う、脳卒中や心臓病を発症するということは、人生を根本から変えてしまいます。しかし、その多くは適切にケアすれば防げるのです。糖尿病について注意が必要な場合は、できるだけ早く医師や看護師に連絡してください」と、アスキュー氏は強調する。
糖尿病で足を失う 後悔してからでは遅い
英国糖尿病学会(Diabetes UK)が公開しているビデオ
 「糖尿病で足を失う」という話は、決して珍しいものではない。コーンウォール州在住のクリス ウィットさん(64歳)は、1999年に2型糖尿病と診断されたが、仕事が忙しくて、糖尿病を発症したことを真剣に受け止めず、治療も中断していた。その結果、2013年にノルウェーに行く旅行の前に足の壊疽が発見された。

 壊疽は潰瘍となり、感染が骨まで広がっており、結果として膝下からの足切断を余儀なくされた。「以前に糖尿病のことが気になって、医師に電話で相談したことがあります。医師は"すぐに検査を受ける必要がある"とアドバイスしましたが、私はその意味をあまりよく理解していませんでした。気にしていなかったのです。いまではそのことを後悔しています」。

 「足の写真を撮って、看護師さんにメールを送りました。すぐに返事がきましたが、読みませんでした。私は彼女のアドバイスに注意を払うべきだった」と、ウィットさんは言う。

 「私は半年もたてば足は治り、普通の靴を履けるようになると楽観的に考えていましたが、まったく見通しが甘かったと言わざるをえません。紹介された外科医から、足の壊疽がかなりひどいことを説明され、切断が必要だと言われました。ショックを受けました。旅行は当然とりやめです」。

 「いまでは、私と同じ糖尿病患者さんに、メッセージを伝えたいと思っています。糖尿病合併症は予防が可能であること。そのためには治療を続け、検査を受けることが大切であること。足に少しでも異常をみつけたら、医師や看護師さんに相談するべきです。足の切断は防ぐことができます。悪くなってからでは遅いのです」。

Diabetes not taken seriously by UK public(英国糖尿病学会 2018年7月3日)
Complications of diabetes(英国糖尿病学会)
National Diabetes Audit (NDA) reports(英国糖尿病学会)
[ Terahata ]
日本医療・健康情報研究所

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