第10回 SGLT2阻害薬服用患者さんへの尿糖測定器による尿糖チェックの有用性について

加藤先生インタビュー
2. 尿糖測定(SMUG)の意義を考える

編集部:貴院でSGLT2阻害薬服用者に行った尿糖測定結果をみて、どのようなことがわかりましたか?

加藤先生: 尿糖がどのくらい出ているか、SGLT2阻害薬服用患者を中心に402件のデータを見てみたところ、そのうち98件、24%が5,000mg/dL以上の尿糖を計測しました。一番高かったのは8,870mg。どういう人が異常に高値だったかをみてみると、やはり血糖コントロールが悪い人ほど尿糖はたくさん出ていました。つまり血糖値が高ければ高いほど尿糖値も高い。そこに相関があるのは事実です。さらなる詳細は現在データをまとめているところです。

 また、、一日の尿糖値の変化をみてみると、空腹時でも尿糖は排泄されており、食後に上昇。特に、食事量が多いと尿糖も増加していました。

 この薬は飲んだらそれだけ効く薬だなと実感しています。例えばアプルウェイ®だと1回の投与で1〜2日は効いて3日目に効果が弱くなりますので、1日おきに服用を指示することもあります。単回でどっしり効くのがSGLT2阻害薬の特徴です。ただHbA1cが服用開始時より下がれば尿糖値も下がります。

 では症例をご紹介します。HbA1c8%の女性患者さん。朝、薬(カナグル®100mg)を飲み朝の尿を持ってきてもらいました。空腹時は271mg/dLでしたが、2時間後は3,666mg/dL。すぐ反応が出るんですね。そして次の日は薬を飲まないようにしました。同じものを食べて食前後の尿糖を見てみると、前日の薬の効果が残っており、食前で2,469mg/dL、食後は4,895mg/dLでした。ですから、基本的には急性投与だろうと慢性投与、前日の投与だろうと平均すれば排泄値はそれほど変わらないとL.Ferrannini先生が論文に書いています。1)

1) J Clin Invest. 2014 Feb 3; 124(2): 499-508. Metabolic response to sodium-glucose cotransporter 2 inhibition in type 2 diabetic patients.

 今回驚いたことに、血糖コントロールの悪い人はもちろんですが、過食傾向がある服用者では当院の検査値データ最高値で8,000mg/dL台と、電子尿糖計の測定最大値である5,000mg/dLを超えてしまう人がいました。ですから尿糖の排泄値をチェックすることで、過食への注意を促す動機づけにもなるかなと思いました。さらに何らかの理由で水分を長時間とれなかった時も当然尿は濃縮され尿糖濃度は高くなるので、水分摂取の指導も重要でしょう。

 あと、SGLT2阻害薬は腎血流量の低下を介し糸球体過剰濾過を改善するという腎保護作用があることがEmpa-Reg Renal試験で注目されています。実際に尿糖排泄量の把握が重要であるため有効性の指標となり、尿糖測定値によって薬を継続すべきか有効性が低いのかを、検討できるのではないかとも考えています。

SGLT2阻害薬を1錠服用して、そのまま3日間の尿糖値を測定した例

(データ提供:株式会社タニタ)

編集部:SGLT2阻害薬は尿糖排泄を促進する薬剤ですが、排泄された尿糖の値は一般的にあまり議論の対象にはなっていません。そもそも把握する必要はないのでしょうか。

加藤先生: 基本的には、HbA1cや血糖値の変化(減少)を見ていれば、薬の効果がわかるので、今のところ、それ以上の必要はないと思っている部分があるのかもしれません。この新機序の薬が発売されてから時間があまり経っていませんので、長期的に尿糖値をウオッチし、排泄の値を知ることで何がわかるのか、その情報をどう活用すればいいか、検討していく価値は大いにあると思っています。

編集部:SGLT2阻害薬を中長期的に服用すると、排泄量が減ってくるという話がありますが、実際いかがですか?

加藤先生: 食事療法もきちんとやって、薬が効いていれば当然そうなりますよね。HbA1cや体重が下がるので排泄量も下がります。しかし服用している以上尿糖が出なくなることはありません。

 血糖自己測定などの機器を使っていない人は日常生活で身体の状態をチェックする機会がありません。尿糖でしたら採尿だけなので痛くないし手軽です。患者さん自身が日々の生活で尿糖チェックを行うことで、薬物効果の確認と、食事量・内容の振り返りになります。それが療養生活のモチベーションとなり、行動変容のきっかけになると考えています。

(2016年11月 公開)