糖尿病セミナー

20. 低血糖

2014年4月 改訂

低血糖になると...

 ブドウ糖は酸素と同様、私たちが生きていくのに不可欠な栄養素で、血液によってからだのすみずみに運ばれています。低血糖でブドウ糖が足りなくなると、どうなるのでしょう。
 最近、人工膵臓を使い血糖値を徐々に下げていき、からだの反応を調べるという研究が行われるようになりました。その結果、血糖値と低血糖症状に、次のような関係があることがわかりました。

健常者でみられる血糖値と拮抗ホルモン分泌、低血糖症状の関係

 まず、血糖値が平均値で 68mg/dLまで下がるとグルカゴンなどの拮抗ホルモンが分泌され始めます。さらに 53mg/dLまで下がると、発汗、手足のふるえ、からだが熱く感じる、動悸、不安感、吐きけという具体的な症状が出てきます。これらは血糖値の下がり過ぎでひき起こされる自律神経の症状で、血糖値低下に対してからだが発する警告信号なのです。
 この警告信号が出る範囲を越え、48mg/dL以下にまで血糖値が下がると、集中力の低下、取り乱す(医学用語では錯乱といいます)、脱力、眠気、めまい、疲労感、ろれつが回らない、物が二重に見える、などが起きてきます。これらは中枢神経の症状で、ブドウ糖の欠乏により脳細胞が正常に活動しなくなりつつあることを示すものです。
 この状態になっても糖分をとらないでいると、さらに進行して意識障害が起こり、自分がどこにいて何をしているのかがわからなくなり(指南力の低下)、患者さん本人ではどうすることもできなくなります。さらに進むと低血糖昏睡に陥り、最悪のケースではそのまま死に至ります。
 なお、低血糖の症状としては、空腹感、霧視(霧の中にいるように見える状態)、頭痛などの、自律神経症状とも中枢神経症状ともいえないような症状もあらわれます。

自分の低血糖症状を覚えておきましょう

 このように低血糖にはいろいろな症状がありますが、だれでも同じように順序よくこれらの症状が出るわけではありません。むしろ症状は極めて個性的で、個人差が大きいのです。例えば、ある人は手のふるえが初めにあらわれる症状だったり、別の人は異常な空腹感を感じたりといった具合です。
 ですから低血糖を経験したら、その症状をよく記憶し、自分の低血糖症状の特徴を知っておくようにします。そうすれば次に低血糖になったとき、素早く対応できるようになります。

突然、意識障害が出ることも

 自律神経症状、中枢神経症状、意識障害があらわれる血糖値のレベル(閾値〈いきち〉)は、すべての人に共通しているわけではありません。例えば血糖コントロールが悪い人では、80mg/dL以上でも低血糖症状があらわれることがあります。
 さらに大事なことは、一度高度の低血糖を起こすと、自律神経症状、中枢神経症状があらわれる閾値(症状が出始める血糖値のこと)が低下して、意識障害のほうが先に起こってしまうことです。つまり、低血糖になっても何の症状も出ず、いきなり自分ではどうすることもできない状態になる「無自覚性低血糖」を起こす危険性が出てくるのです。ただし、その後1〜2カ月間、低血糖を起こさなければ、自律神経症状、中枢神経症状の閾値は元の値に戻ります。
 糖尿病の合併症で自律神経が障害されている場合にも、無自覚性低血糖が起き、しかもこの無自覚性低血糖状態は、くり返しますので注意が必要です。

血糖値が下がり過ぎると...

68mg/dL(平均値)

グルカゴン、アドレナリンなどの拮抗ホルモンの分泌が始まる
拮抗ホルモンは血糖値を上げる働きをしますが、糖尿病だと拮抗ホルモンの分泌能力が低下しています


53mg/dL(平均値)

発汗、手足のふるえ、からだが熱く感じる、動悸、不安感、吐きけ、空腹感、霧視

自律神経症状(低血糖に対するサイレン)


48mg/dL(平均値)

集中力の低下、取り乱す、脱力、眠気、めまい、疲労感、ろれつが回らない、物が二重に見える、空腹感、霧視

中枢神経症状(脳細胞がギブアップ寸前)


意識障害

無自覚性低血糖に注意!!
過去1〜2カ月以内に低血糖を経験していたり、合併症の神経障害があると、何の低血糖症状もなく、いきなり意識障害を起こします


低血糖昏睡


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