2. 食事療法のコツ(1) [基礎]

2014年2月 改訂

監修
東北大学名誉教授 後藤由夫先生


なぜ食事療法が必要なのでしょうか?

 そのわけは、糖尿病が、食事と密接な関係にあるインスリンの、不足や欠乏から起こる病気だからです。インスリンが不足すると、食べ物を通して摂取したブドウ糖などの栄養素が利用されなくなり、体の各細胞が栄養不良になります。一方、利用されないブドウ糖はどんどん増え続け、血液中にあふれてきます。その状態が高血糖で、これを放置すると、合併症が起きてきます。
 これを防ぐには、摂取する食べ物の量を調整し、各種の栄養素も不足しないよう、食事のとり方を変えねばなりません。その人に合ったエネルギー量にすることと、栄養バランスのとれた食事に切り換えること。それが食事療法です。

食事療法こそ最高の特効薬です

 食事療法は、薬を飲むわけでもなくお金もかからないため軽視されがちですが、一番効果があり、またほかの治療法の効果も助ける、もっとも基本になる重要な治療法です。
 糖尿病を根治する治療法がみつかっていない現在、糖尿病治療の最大の目的は、合併症の予防におかれています。合併症は、高血糖を放置していれば、誰でも例外なく起きてくるものです。失明したり人工透析が必要になるなど、合併症が起これば、社会生活が不自由になるだけでなく、寿命も短くなります。
 しかし、食事療法を確実に実行し、血糖コントロールをよい状態に保ち続ければ、合併症と無縁の生活も可能です。とくに、2型糖尿病の場合、多くの人が食事療法だけで、病状を十分に改善することができます。また、インスリン注射や飲み薬が必要な場合も、この食事療法がしっかりできていないと、その治療効果は上がりません。
 この治療法は、頭で理解しても、実行しなければ意味がなく、また、続けてこそ効果があります。それには、コントロールのよい状態がいかに快適かを、自分で実感すること。それが治療を長続きさせる秘訣といえるでしょう。生半可な気持ちを捨て、自分の病気は自分で治す覚悟で、毎日食事療法に取り組むことが、糖尿病を克服する強い力となります。

どこが“療法”なのでしょうか?

 食事療法といっても、特別な食事があるわけではありません。1日の摂取エネルギー量が決められるだけ。あとは、炭水化物、たんぱく質、脂質の三大栄養素の必要量を、バランスよくとり、ビタミンやミネラルなども、欠かさずにとることが、治療です。つまり、それまでの食事の偏りを改め、健康的な食事に変えることが目的なのです。また、この食事療法は、糖尿病でない人が、生活習慣病を予防し長生きするための健康食として利用しても、効果的です。

食品交換表について

 食事療法で難しさを感じるのは、食品を選ぶとき、食品のもつ栄養素やエネルギー量が、各食品よって全部違うことです。その面倒な部分をわかりやすく表にしたのが、日本糖尿病学会の『糖尿病食事療法のための食品交換表』(以下、交換表と略します)です。
 交換表は、ふだんよく食べられている一般的な食品について、栄養構成の点で似たもの同士を、7種類に分類(6つの表と調味料)。同じ表同士の食品なら、交換(取り替え)可能な範囲を示したものです。これを使えば、使いたい食品のエネルギー量と重量が簡単にわかり、変化に富んだ献立にすることができます。

食品の分類
???調味料主治医や管理栄養士の指導が必要なもの
炭水化物を多く含む食品たんぱく質を多く含む食品脂質を多く含む食品ビタミン、ミネラルを多く含む食品
表1 表2 表3 表4 表5 表6
食品の種類 穀物、いも、炭水化物の多い野菜および種実、豆(大豆を除く) くだもの
魚介、大豆とその製品、卵・チーズ、肉
牛乳と乳製品(チーズを除く) 油脂、脂質の多い種実、多脂性食品 野菜(炭水化物の多い一部の野菜を除く)、海藻、きのこ、こんにゃく みそ、みりん、砂糖など
アルコール、菓子、清涼飲料などのし好食品、インスタント食品、外食料理など
〔日本糖尿病学会編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表 第7版」、13頁、日本糖尿病協会/文光堂 2013年発行より引用改変〕
日本糖尿病学会編・著「糖尿病食事療法のための食品交換表」に関する記載・記述については、一般社団法人日本糖尿病学会の引用許可を得ています。
転用などを行う場合は必ず、該当する部分のデータあるいはプリントアウトを添付するなどして、同学会の引用許可を得てください。

治療法自体は少しも難しくないのですが、実践の段階で、慣れるまでちょっと根気が必要です。
そこで、食事療法のポイントを、思いきって6段階に整理し、1段階ごとにマスターすれば、簡単に食事療法の方法が身につくプログラムをつくりました。
次のページから、さっそく挑戦してみてください。


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