インスリンポンプSAP・CGM情報ファイル

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第3回 「CSIIで"糖尿病のある人生"をより豊かに」

陣内病院理事長・院長
陣内 秀昭 先生

6. 糖尿病の難しさ

Dr. 陣内:

医療者として糖尿病治療が難しいと感じるのは、勉強した知識が実臨床で該当する場合としない場合が沢山あること。それを理解しながらも、勉強はし続けなくてはならない。その辺りが通常の疾患と異なるところです。

CSIIも然りで、完璧に設定すれば絶対大丈夫!とは言い切れません。例え100点の調整を続けていても体調は日々変わりますし、歳を取れば病態も変わっていき、それに応じて治療も変えていかなくてはならない。

ーー完璧、正解がないんですね
Dr. 陣内:

常に良い医療、ベストな選択を勧めたい一方で、日常臨床では目の前の患者さんの選択は一人一人異なります。総論でそんなはずないと言っても、実際そうなんだからやるしかない。教科書通りでない患者さんが山ほどいるわけです。どんな場合にも対処できるよう医療者は常に最良の選択肢を揃えて置いておかなくてはならないということです。

最近よく言われているのが、RCTで例えばHbA1cで目標値が7%といってもどの国でも7%以下の人なんて半分以上いないんですよね。イギリスに至っては25%。だからできない目標を設定しても仕方ありません。人生に即した治療というのは、選択肢が山のようにある中での、いわゆる本当の意味でのリアルワールド。

CSIIも、頭からいろいろ思い込まずにまずはやってみて、それがどうworkするかをリアルワールドでみていくことが大切。それが正しい形で誇張・矮小化されることなく皆さんに情報が伝わり、選ばれていくというのが理想です。

"その患者さんにとって正しい治療は何か?"というのは、社会的背景も加味したうえで考えなくてはいけないわけですが、日本の学会で議論されているのはアカデミズム論ばかりで、プラグマティズム(実用・実利的)な話はほとんどありません。こうなるはずだという話ばかりを押し付けていると、患者さんの人生は置きざりにされてしまいます。

私は、患者さんのQOLを維持することが最も大事だと思っています。私の父も「患者さんの人生ありき、そしてその人生の一部として糖尿病がある」と考えています。

ーー最近テレビでも健康番組が増えていますし、インターネットでも情報がとりやすくなっています
Dr. 陣内:

なにしろ現代は情報が沢山ありますから、知りたいと思えば高度な情報が簡単に得られるわけです。自分の治療法については一生懸命調べますから、最近の患者さんの情報量に驚くこともあります。一方で、治したいと思う気持ちがすごく強いけれど情報弱者な方も多い。あふれる情報を鵜呑みにしていると、とんでもないところにたどり着いてしまうから怖いですね。


2017年06月 公開

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