糖尿病患者さんの間食指導をどうする?

V. 指導症例2 (臨床医編)

症例検討とまとめ (2)

2010.02.26

【低カロリー和菓子を食べたときの血糖値の変動】

 血糖コントロールがまだ十分に得られていない状態での評価ですが、糖尿病の治療方法に関わらず、50%の患者さんでは、低カロリー和菓子を摂取しても血糖は上昇しませんでした。その一方で、同じものを摂取して血糖が 40mg/dL以上、上昇する患者さんが18%存在しました。


※画像をクリックすると大きいグラフを表示します。

<まとめ>
 糖尿病患者さんにおいて、間食が血糖コントロールに与える悪影響を理解しながらも、実際には間食が止められない患者さんが多いことがわかり、一方的に間食禁止とすることの難しさが改めて認識されました。さらに、間食も含めた食事指導を望む患者さんが多いことが示されました。
 また、間食をする場合には、その内容やカロリーによっては血糖値にそれほど大きな影響を与えない場合もあることもわかりました。一方では、同じものを摂取しても高血糖になる患者さんもおり、それぞれ個人の血糖コントロールの程度や薬物療法、インスリン分泌能による影響があるのではないかと推測されます。
 この結果から、食事療法の指導においては、糖尿病患者さんは間食をしている可能性が高いことを念頭に、医師の側からも積極的に間食について聞き取りを行うことが大事であることを再認識いたしました。糖尿病であるからといって甘いものから隔絶されたままで治療を続けていく事は難しいと考えられ、ただ禁止するだけではなく、個々の患者さんのニーズと血糖コントロールの状態にあわせて、HbA1cを見ながらの上手な間食の取り入れ方法も考慮されてよいのではないかと思います。その際には、低カロリー食品の利用も含めたよりきめ細やかな指導が必要となりますので、コメディカルのスタッフのご協力をお願いできればと思っています。

終わりに
 “糖尿病の治療には間食は禁止”、果たしてみなさんは守れますか?私はこうして原稿を書きがら紅茶 (砂糖ミルクなし) とクッキーを2枚食べました。ちょっとパッケージのカロリー表示を気にしました。なになに、小袋2枚入りで81kcal・・・これなら大丈夫かな、と思いながら。こういう表示があればうれしいですね。ひと箱当たりとか、100g当たりのカロリーではとっさにはわかりません。
 多くの糖尿病の患者さんが同じ思いと少しばかりの罪悪感を感じながら、日々過ごされています。患者さんは実は、おやつ、間食についてのアドバイスを求めていることが、この連載を通じておわかりいただけたかと思います。最終回で紹介したような市販の低カロリーおやつの、上手な利用法をアドバイスすることも患者さんにとっては大きな福音になります。
 加藤流でいくか、吉田流でいくか・・・患者さんのタイプや血糖コントロール状況、先生方の考え方により築かれるオリジナルかつテーラーメードの療養指導を患者さんは求めています。
 おやつには果糖やコーンシロップの代謝に与える影響など、科学的に解決しなければならない問題も多く残っていますが、ここはひとまず、我々医療者が、“おやつ”を豊かな食生活の一部として捉えていくことで、よりよい食事指導へとつながっていくと期待し、この連載を閉じさせていただきます。

関東労災病院長
糖尿病内分泌内科部長
浜野久美子

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