母乳は飲ませてください。授乳は母親にも子供にも糖尿病によいことが見出されています。
それは
- 授乳は2型糖尿病の発症予防につながる
- 1型糖尿病の発生率は母乳を飲んでいた子供で低い
- 妊娠糖尿病だった女性では授乳が糖尿病への進行を抑える
- 糖尿病母体から生まれた子供では母乳を飲んだ子の方が肥満や糖尿病の発生が少ない
などの研究発表があります。
インスリンは乳汁に移行しますが、インスリンは飲んでも吸収されませんので、赤ちゃんが低血糖を起こす心配はありません。授乳にインスリンは何ら問題がないのです。
2型糖尿病で、妊娠前は食事療法だけあるいは飲み薬だった人、妊娠糖尿病だった人については次のようになります。血糖降下薬のうちダオニール(オイグルコン)だけは近年の研究でお乳に移行しないことが解りましたので使用している国もあります。しかしわが国では普通は使用しません。血糖降下薬のSU薬およびメトフォルミンは欧米では授乳婦で再開可となっていますが、わが国ではすべての経口血糖降下薬は妊娠中同様、授乳婦でも使わないことになっています。
ですから出産後、食事療法だけで血糖がよくコントロールされない場合、授乳中はインスリン注射を続けます。
出産後は妊娠中に比べ血糖が下がりますので妊娠中のインスリン量をそのまま続けますと低血糖を起こします。授乳が始まりますとさらに血糖値は下がります。血糖値を見ながらインスリンを減量していかなければなりません。
授乳をしている間は食事エネルギー量を増やします。母乳100mLにつき1単位が目安ですが母体の体重の変化も見ながらエネルギー量を決めていきます。どのような食品をどのタイミングでとるか主治医および栄養士さんの指導をうけましょう。
授乳前に超速効型や速効型インスリンを打つ場合は低血糖を起こさないよう単位数を減らさなければならないことがよくあります。どの位減らすかは授乳前後の血糖の変化がどの程度かを調べて主治医に相談してください。
これらのことを注意して、できれば生後1年間は母乳を飲ませるようにしましょう。授乳は栄養や免疫のこと以外に母子のスキンシップの点でも大変重要であることが近年見直されています。しかしどうしても十分でないお母さんもありますから、そのようなときは助産師さん、小児科の先生とも相談し、気持ちを楽にして人工栄養を使いましょう。
2016年9月改訂 (済生会中央病院 穴沢園子)
2007年11月
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