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4. 育児の上で気をつけることがありますか? |
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1)遺伝の心配をしないこと
妊娠前から糖尿病があって出産したお母さんの糖尿病には1型糖尿病と2型糖尿病があります。妊娠してから初めて糖尿病が判ったお母さんは妊娠中は「妊娠糖尿病」と呼ばれますが、2型糖尿病と密接な関係があります。
2型糖尿病は遺伝しやすいことは皆さんよくご存知のとおりです。けれどお母さんが糖尿病だとその子がすべて糖尿病になるわけではありません。遺伝体質の上に過食、運動不足、肥満など引き金になる要素が働いて初めて糖尿病は発症するのです。
近年はこの引きがねになる生活環境に満ち溢れているため子供の2型糖尿病が増えていることは事実です。ですからお母さんは遺伝を怖がるのでなく発病させやすいライフスタイルから子供を遠ざけることが大事です。
これに対して1型糖尿病は遺伝関係はほとんどなく、また食べすぎで発症したのでもないことは患者さんご自身がよく承知しておられるとおりです。
2)大きく生まれた赤ちゃんは肥満に注意
糖尿病母体の赤ちゃんの25〜50%に、生まれたときの体重が標準より大分大きい「過体重児」が見られます(4,000g以上の場合を巨大児といいます)。はじめのうちは体重曲線からはみでる大きさですが1歳になる頃までに大体標準になっていきます。ですから体重の伸びが悪いと心配することはなく標準に近づくことの方が好ましいのです。
せっかく標準になったあとは、再び体重が増えすぎないように注意しましょう。というのは過体重児では学童期、思春期に肥満し、若いうちから糖代謝の異常が生じ、女子では妊娠時に「妊娠糖尿病」が現れ、男子ではメタボリックシンドロームを経て糖尿病になるという経過をとることが少なくないからです。
身体をよく動かすよう外遊び、スポーツを積極的にさせ、甘いものや油濃いものを与えすぎないよう気をつけて肥満児にならないようにしましょう。
食事の好みや食習慣は母親から伝えられるものですから責任は重大です。身をもって偏りのないよい食事習慣を示してください。
3)小さく生まれた赤ちゃんを無理に肥らせない
早産、妊娠高血圧症候群、ひどいつわり、妊娠前からの痩せ、逆に肥満があって妊娠中に食事エネルギーを制限した、などの場合赤ちゃんが標準より小さいことがあります。「低出生体重児」といいます。
近年、低出生体重児は大人になってからメタボリックシンドローム(内臓肥満、高血圧、高脂血症、高血糖などを合併した状態で、心筋梗塞や脳梗塞を起こしやすい)になりやすいということが知られるようになりました。しかしこれも心配しすぎはよくありません。やはり成長過程での過度の体重増加など、生まれてからの要因が大きく影響します。小さいからといってあせって大きくしようとガンバルのはよくないことがわかっています。
4)まとめ
子育ては大変です。職業をもっている場合はなおのことです。忙しくても子供とはスキンシップを大切に、ゆったりした気持ちで接するように心がけましょう。妊娠中に厳格なコントロールができた経験と自信をよりどころに糖尿病ある人生を根気よく着実に積極的に生きてください。
(済生会中央病院 穴沢園子)
2007年11月
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2007 All copylight by The Japanese Society of Dibetes and Pregnancy