糖尿病の妊婦さんであっても、分娩方法は原則として経腟分娩です。帝王切開は産科的な適応がある場合に限られます。
帝王切開は通常、赤ちゃん(胎児)の状態やお母さん(母体)の状態が悪化したために急速遂娩(緊急の出産)が必要な場合、胎児が大きく経腟分娩が困難と予測される場合、あるいは網膜症や腎症などの糖尿病合併症が経腟分娩によって悪化する危険性が高い場合に行われています。
ただ、糖尿病を持っている妊婦さんでは、帝王切開率が一般妊婦さんの約2〜4倍高いことも事実です。たとえば、糖尿病妊婦さんでは、妊娠末期になって赤ちゃん(胎児)の状態が突然悪くなることがあります。妊娠末期に胎児心拍数モニタリング検査を行い、もし異常所見があれば帝王切開になる可能性が高くなります。
また、血糖管理が不十分な場合には4Kg以上の巨大児を出産することもあり、経腟分娩は困難です。4Kg未満であっても、胎児の肩に筋肉や脂肪が蓄積するために、児頭娩出後に肩が娩出困難となる場合もあり、そのために重症仮死や腕神経叢損傷を起こす危険性があります。このような肩甲難産が予測される場合にも帝王切開が選択されます。
血糖管理が不十分な場合、お母さん(母体)では、妊娠高血圧症候群の合併頻度が数倍高くなります。症状が重症化した場合、分娩の進行状況によっては帝王切開となります。
糖尿病合併症では腎症と網膜症によく遭遇しますが、合併症の重症度によって帝王切開を考慮する場合があり、それぞれの専門家との話し合いが必要となります。
(宮崎大学 鮫島 浩)
2007年11月
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