劇症1型糖尿病は、その名のとおり急速に重症化し、未治療で放置しておくと死にいたる糖尿病です。特徴は数日間で全身倦怠感、意識障害を伴って発症し、検査では発症時のHbA1cは正常もしくは軽度上昇、早期よりインスリン分泌が著しく低下しています。
頻度はわが国における急性発症1型糖尿病のおよそ20%を占め、地域差は認めず、大半が成人後の発症です。さらに大きな特徴は、女性は妊娠に関連して発症することが多いことです。<>
原因は不明ですが、かぜをひいた後に発症することが多く、ウイルス感染が原因の1つとして考えられています。また、特定のクラス?UHLAといわれる免疫に関係する遺伝子タイプが発症に関連することもわかっています。
妊娠中は尿糖排泄閾値が低下するため、尿糖の陽性は認められやすくなります。また尿中ケトンも出現しやすいため、この病気を見逃すことがあります。しかし尿糖、尿ケトン体がともに陽性であれば血糖値を測定すべきであり、糖尿病(妊娠糖尿病を含む)の既往のない妊婦さんが随時血糖300mg/dL以上のときはこの病気の疑いがあります。
近年の研究では、劇症1型糖尿病発症後5年目ですでに糖尿病合併症が発症し、その比率は通常の1型糖尿病より高頻度であることもわかっており、通常の糖尿病よりさらに厳格な血糖コントロールを行う必要があります。
心臓病センター榊原病院 清水一紀)
2007年11月
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