妊娠中は母児の合併症を予防するために厳重な血糖管理が必要になります。食事療法を行っても前述(妊娠中の注意点Q4 )された血糖値に管理されない場合はインスリンを使用し血糖コントロールを行います。通常のインスリン療法でうまく血糖がコントロールできない場合は、インスリンの基礎量と追加量を補充する強化インスリン療法すなわちインスリンの頻回注射療法やインスリン持続皮下注入療法などが推奨されます。インスリンには作用発現時間および効果持続時間の差により多くの種類がありますので、血糖自己測定の結果を参照して適切な組み合わせを決めてもらいましょう。
妊娠中は、インスリン抵抗性といってインスリンが効きにくい状態になるため、妊娠末期のインスリン必要量は妊娠前あるいは妊娠初期のおよそ2倍に達することもあります。しかし,赤ちゃんの異常を予防するためには必要であり、産後には減量あるいは不要になるためあまり心配し
ないようにしましょう。
使用するインスリンはこれまで、妊娠時使用の安全性に関する米国食品医薬品局(FDA )の分類に基づいて使用していました。しかしFDAは2014年12月にこの薬剤胎児危険度のカテゴリー分類を廃止し、各インスリンについて妊娠に関する記述型の添付文書を義務づけるようになりましたが、ほとんどのインスリンは世界中で妊娠中も安全に使用されていますので心配いりま
せん。もし、血糖管理のためにどうしても安全性の確認していないインスリンを使用する必要がある場合には、医師から説明がありますので良く話を聞いてどうするか決めましょう。
2016年9月改訂
(岡山市立総合医療センター 平松 祐司)
2013年05月
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