食事療法は、妊娠中でも血糖コントロールの基本です。妊娠中の理想ダイエットは、1)お母さん(母体)と胎児がともに健全に妊娠を維持するのに必要なエネルギーを供給し、2)食後の高血糖を起こさず、かつ3)空腹時のケトン体産生を亢進させない、という三条件を満たす必要があります。妊娠中は胎児の発育、お母さんの子宮や乳房の発達のために必要なエネルギー量が増加します。また、妊娠中は妊娠前に比べると食後に高血糖になりやすいというのが特徴です。一方、空腹時はお母さん(母体)の血糖(ぶどう糖)は胎児のエネルギー源として優先的に使われ、お母さん自身は脂肪をエネルギー源として利用するためケトン体の産生が増加します。過剰のケトン体は糖尿病ケトアシドーシスの誘因となり、妊娠中は妊娠前に比べてその傾向が強くなります。
糖尿病ケトアシドーシスは、胎児と母体の生命にかかわる重症な合併症です。過剰なエネルギー制限は、同様に過剰なケトン体をつくりだし母体と胎児の両方に悪影響をおよぼします。肥満妊婦さんはとくにその傾向が強くなります。
糖尿病や妊娠糖尿病の妊婦さんの標準的ダイエットは、正常妊婦さんの必要エネルギー量の概ね30%カット程度のエネルギー制限食で、それ以上の過剰なエネルギー制限は避けなければなりません。
また、1日当たりのエネルギー量設定が同じでも、おやつや夜食に分割することで高血糖を防ぐことができます(分割食ダイエット)。
標準的ダイエットで血糖コントロールが不十分な場合はインスリン治療が必要です。
(長崎医療センター 安日一郎)
2007年11月
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