不妊症や月経不順の原因のひとつに糖尿病があります。ですから、糖尿病の女性は月経不順になりやすいといえます。
なぜ糖尿病の女性は月経不順になりやすいのか、その機序は完全には解き明かされていません。規則的な月経には規則的な排卵が必要であり、インスリンはその排卵機構にとってとても重要なホルモンであることが知られています。糖尿病ではインスリンの代謝が障害されることが多いため、排卵障害をきたす頻度も高いと考えられています。
排卵障害の機序のひとつにインスリン抵抗性が関与していると考えられています。インスリン抵抗性とは、インスリンの作用が効きにくい状態を示し、2型糖尿病や妊娠糖尿病の基本的な病態です。
インスリン抵抗性は肥満や多嚢胞性卵胞症候群とも関連しています。この両者とも不妊症や月経異常の原因となります。そこで臨床的に、多嚢胞性卵胞症候群が原因でインスリン抵抗性を示す不妊症の女性に、治療としてインスリン抵抗性改善薬を投与すると、妊娠率が有意に上昇し、また流産率も減少することが報告されています。同様に、月経不順を訴える肥満女性に対して、適切な食事療法と運動療法で体重をある程度減少させると、月経が発来したり、規則的になったりすることがあります。
(宮崎大学 鮫島 浩)
2007年11月
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