「自信と希望」マイカ・ラミレスさんがもたらしてくれたもの(フィリピンの糖尿病患者さん)
Negros Island Diabetes Association_NIDA, Inc.スタッフ
ボイセ・リム さんのレポート
フィリピン共和国では、インスリン・フォー・ライフ(IFL)・オーストラリアの支援のもと、現地の医療従事者やボランティアの方々が、糖尿病の患者さんやその家族を対象としに毎年1回、糖尿病検査プログラムやキャンプを実施しています。
■2017年フィリピンの糖尿病検査プログラム、糖尿病キャンプレポート(IFLレポート)
http://www.dm-net.co.jp/idaf/act/update/2017ifl.php
2014年から交流を続けてきた若い糖尿病患者のマイカ・ラミレスさんがお亡くなりになったことに、強い衝撃を受けています。将来、彼女にこんなことが起こるなんて考えもしませんでした。
2016年のフィリピン共和国ネグロス・オリエンタル・バレンシアでの糖尿病キャンプに参加したマイカさんは、参加者の中でも非常に血糖値が高く、そのせいか彼女の歩く姿は、まるでお酒に酔っているかのようでした。それでも、同じ病気を持つ参加者たちとふれ合い、このキャンプを楽しんでいる様子でした。
2018年5月の糖尿病キャンプにも参加するとのことで、マイカさんとの再会を楽しみにしていましたが、開催1か月前の2018年4月に、まさか彼女が20歳で生涯を終えてしまうとは、思ってもいませんでした。
在りし日のマイカ・ラミレスさん
インスリン・フォー・ライフ・オーストラリア(IFL)は、糖尿病キャンプに参加する子供たちに、インスリンを無料で提供しています。しかし、提供されたインスリンを注射していても、合併症にかかる患者さんが後を絶ちません。その理由の一つとして、「家庭の経済的な事情」があります。
フィリピンでは、糖尿病のための健診や、治療に欠かせないインスリンは高額なため、経済的な事情で適切な治療を受けさせることができず、糖尿病患者さんが合併症などで命を落としてしまうケースもあります。
また、患者さんやその家族に対して、十分な糖尿病教育ができる環境が整っていないのが現状です。
1.交通の便が悪い地域では、IFLなどの支援によりインスリンは手に入ったとしても、医師の診察を受けるためには都市部の病院へ通院しなくてはならず、経済的な事情から健診の頻度は3か月に1度程度となり、医師も患者さんのインスリン注射の経過観察ができない。
2.血糖測定については、十分な指導を受けられないために、血糖測定の活用法が分からずテストチップをすぐに使い切ってしまったり、測定を怠って使用期限が切れてしまうことがあるなど、血糖コントロールの重要性について、理解されていない。
3.薬物療法、食事療法については、インスリンさえ注射すれば、食事療法は必要とせず、どんなものでも食べたり飲んだりしても良いと思いこむケースがある。バランスの取れた食事療法の重要性や薬物療法について、理解がされていない。
これらのことが多くの糖尿病患者さんに共通していることで、不十分な知識から来る誤解が、患者さんにを非常に危険な状況に追い込みます。患者さん自身が現実を否定し、自己満足に陥り、注意を怠ってしまうのです。
上の写真は、2016年の糖尿病キャンプに参加した子供たちの血糖測定表です。
赤字は高血糖を意味しており、マイカさんは常に血糖値が高い状況であることを示しています。彼女もまた、家族の十分な協力が得られず、常に血糖値が高い状態が続いたため、命を落としてしまったケースです。
インスリンの寄付を受け、ボランティアの医師やエデュケーターが患者さんやその家族に糖尿病に必要な知識を授けても、命を守ることができないことがあるのです。
この事例によって、我々が注視していないと、若い糖尿病患者さんの命が救えないということを学びました。糖尿病キャンプに参加した子供達の微笑みが、過去の思い出となってしまう可能性があるのです。
糖尿病キャンプを開催する意味は、患者さんとその家族へ、糖尿病の教育を与える場でもあると考えます。そのためみは、多くの患者さんやご家族にもこの糖尿病キャンプに参加していただき、血糖コントロールをしなければ、目、腎臓、心臓、四肢、そして脳にも障害を与えるということを理解しなければならないのです。血糖コントロールをしなければ、簡単に命が奪われてしまうのだと、認識してもらわなければならないのです。
血糖値を適正値に保つ正しい方法、正しい食事療法(食材の割合)、適度な運動が、より良い生活を約束し、寿命を延ばすことにもつながるということを教えます。また、キャンプによって若者たちに自信を持たせ、糖尿病と闘っているのは1人ではないということを教え、自分たちが明るい未来と健康に対する新たな希望を持たせることができるのです。
フィリピン共和国では、インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリアの協力のもと、毎年1回、各地で糖尿病検査プログラムや糖尿病キャンプを実施しています。
糖尿病キャンプでは、現地の糖尿病患者さんとその家族を対象に、医療従事者が糖尿病療養に必要な指導やアドバイスを行っています。子供たちにとっては、同じ病気を持つ仲間との交流を楽しんでいます。
検査プログラムでは、糖尿病の検査を受けることができない方々へ、医療従事者が、血糖測定を実施し、糖尿病を疑われる方へは糖尿病療養についての指導を行っています。
2019年も5月に、セブ市をはじめ、フィリピン各地で、糖尿病の検査プログラムやキャンプを実施する予定です。
これらの活動資金については、現地の支援団体が寄付の呼び掛けを行っていますが、開催に向けて資金が不足している状況です。
フィリピンの小児糖尿病患者とその家族が糖尿病について学び、そして子供たちが健康で元気に過ごすことができるように、フィリピンの糖尿病キャンプ、検査プログラムの実施について、みなさんのご支援を頂きますようお願いいたします。
国際糖尿病支援基金は、インスリン・フォー・ライフ(IFL)オーストラリア通じて、フィリピンの糖尿病の患者さんを支援しています。
IFLの活動にご賛同いただき、御参加いただける方は、下記口座(郵便局)までお振込み頂きますようお願い申し上げます。
御協力頂きました方は、支援者としてこのホームページ上の「支援者名」のコーナーでお名前を発表させて頂きますが、本名での発表をご希望でない方は、振替用紙(郵便局)の通信欄にご希望のお名前をご記入ください。
振込口座(郵便局):
口座番号:00160−3−82542
加入者名:国際糖尿病支援基金口
※通信欄へ「フィリピン糖尿病の患者さん支援」とお書き頂きますようお願い致します。
【English】Confidence and Hope – Maika Ramirez
http://www.dm-net.co.jp/idaf/ifl2018/Confidence and Hope – Maika Ramirez.pdf
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