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2012年02月06日
肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
肥満・過体重の2型糖尿病患者では、精神的ストレスを軽減することが血管内皮機能を改善し血管保護的に作用することが、12月4日〜8日開催の国際糖尿病会議(ドバイ)で報告された。埼玉医科大学総合医療センター内分泌・糖尿病内科 秋山義隆氏の発表。
内皮機能をFМD、精神的ストレスをPAIDで評価
秋山氏らは、糖尿病入院患者の血管内皮機能を測定し、その改善または悪化と関連すると考えられる因子との相関を検討した。血管内皮機能の測定には、上腕の動脈血管径を超音波で計測するFМD(Flow Mediated Dilation)を使用。駆血前の血管径と、5分間駆血し開放後の血管径の変化で評価した。
また、血管内皮機能は交感神経活性との関連があることから、交感神経系に影響を及ぼす精神的ストレスをPAID(Problem Areas In Diabetes)により評価し、検討項目に加えた。
対象は、教育目的で同院に入院した2型糖尿病患者68名(男性36名、女性32名)。患者背景の主なものは、年齢62±12歳、糖尿病罹病期間9±7年、BMI27±5、HbA1c10±2%。
FМD改善とPAID改善が有意に相関
FМDは2週間の入院期間中に1週間の間隔をあけて2回測定した。初回の測定値の平均は4.4±2.5%、2回目は4.2±3.0%だった。FМDの改善(上昇)がみられなかった患者に比べ、LDL-Cが高値、拡張期血圧の変化が低値の患者はFМDが改善し、それぞれの差は有意だった。
また、FМD値の改善は、PAIDスコアの改善(低下)と有意に相関していた(r=0.3、p<0.05)。
とくに興味深ことに、BMI27をカットオフポイントとして二群に分けPAIDスコアの変化をみたところ、前者(BMI>27、n=24)のPAIDスコアは−6.9±10.6、後者(BMI≦27、n=44)は−0.2±11.5と、肥満度のより高い患者群のほうで精神的ストレスがより顕著に改善しており、両群間に有意差があった
その一方、教育入院期間中には、血糖状態の変化とFМD値、PAIDスコアの変化に有意な相関はみられなかった。
対照的に、やせている患者(PAIDスコアが有意に改善しなかった)のFМD値に、有意な改善は認められなかった。
結論として同氏は、「肥満や過体重の2型糖尿病患者に対する入院や教育的ケアは、PAIDで把握される精神的ストレスを軽減して血管内皮機能を改善し、血管保護的に有益である」とまとめている。
- FМD(Flow Mediated Dilation):
- 血管内皮機能を評価するスタンダードな指標で、上腕の動脈血管径を超音波で計測する。駆血の前値を基準とし、駆血開放後の最大値の変化量を%で表した数値が一般的に用いられる。基準値は6%以上で、数値上昇は内皮機能改善、低下は内皮機能悪化を意味する。
- 糖尿病臨床でQOLを評価する指標として、ジョスリン糖尿病センターで作成され、邦訳もされている。20項目の質問からなり、それぞれを1〜5点の5段階評価で回答し、点数を合計する。合計100点で、点数が高いほどQOLが低いと判定される。
◇FMD関連情報:
- FMDは動脈硬化危険因子の集積を鋭敏に反映 CAVI・ABIとの比較
- 食後脂質異常が、食後高血糖よりも血管内皮機能低下に強く影響
- 肥満でEDの中年男性は生活習慣病未発症でも内皮機能が有意に低下
- ACS後の心リハによる運動耐容能向上は血管内皮機能の改善と相関
- DPP-4I追加と併用OHA別にみた内皮機能改善効果 FMDでの検討
- CADでは非糖尿病でも微量アルブミン尿出現率が高く、FMD低下と関連
- 上腕動脈IMT・FMDの同時計測で、冠動脈疾患リスクの層別化が可能
- DPP-4阻害薬の食後高脂血症改善を介した血管内皮保護作用
- 禁煙により酸化ストレスが低下し、血管内皮機能が有意に改善
- 糖尿病細小血管障害とFMD値が相関。短期加療による改善も評価可能
- 血管内皮機能は体温日内変動と相関するが、糖尿病ではその関係が破綻
- 心不全患者の心リハ。急性期のADL改善にも血管内皮機能が関与
- 糖尿病患者の冠疾患スクリーニングにFMDが有用
- 食事由来コレステロールよりはTGとアポB48が血管内皮機能に影響
- 直接レニン阻害薬の多面的効果 透析患者での血管内皮機能を改善
- DPP-4阻害薬の変更による血管内皮機能改善の上乗せ効果
- 塩分の多い食事は、食直後から血管内皮機能(FMD)を低下させる
- 血管内皮機能は血糖変動と逆相関し鋭敏に変化する
- 大豆イソフラボンがTGを低下させ、FMDを改善
- 「血管内皮機能検査」が診療報酬改定で新設される(厚生労働省)
- ミグリトールは冠動脈疾患併発糖尿病患者の血管内皮機能を改善する
- FMD低値は糖尿病発症の予測因子。ドックなどでは精密検査を
- 肥満2型糖尿病では、精神的ストレス軽減が血管内皮機能改善につながる
- 網膜症のある女性糖尿病患者は血管内皮機能(FMD)低下ハイリスク
- HDL-Cの血管内皮機能(FMD)保護作用は糖尿病で相殺される
- 仮面高血圧合併2型糖尿病では血管障害(FMDやPWV)が高度に進展
- DPP-4阻害薬は血管内皮機能(FMD)を改善する
- 脳や心臓の血管が詰まる前に。血管の若返りがわかる検査指標「FMD」
- 動脈硬化が早期にわかるFMD検査装置
- 血管内皮機能、FMD検査のユネクス
- 一般向けサイト 動脈硬化の進展を知る「FMD検査.JP」
[ DM-NET ]
日本医療・健康情報研究所
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