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2011年06月08日

透析患者の血糖関連指標 グリコアルブミンのみ予後と相関

 糖尿病腎症により透析治療を受けている患者のHbA1cは、実際の血糖状態より低値となることが、これまでの報告で示されている。また、透析期の糖尿病患者が良好な血糖を維持することが予後の改善につながるか否かについては、これまで十分に明らかになっていない。一方、透析下においてもグリコアルブミンは、血糖状態をより正確に反映するとれさている。このたび、米国腎臓学会の学会誌のオンライン版に、グリコアルブミンのみが、糖尿病患者の死亡率や入院加療を要する率と相関するとの論文が掲載された。
維持透析中の糖尿病患者のHbA1cは偽低値を示す
 HbA1cは血糖管理指標のゴールデンスタンダードとされているが、合併症や併発症、治療内容、個体差などの影響を受けて、実際の血糖状態よりも高値または低値となることがある。末期腎症もやはりHbA1cが低値となるケースの一つとして知られている。これは、腎機能低下による赤血球寿命の短縮、腎性貧血に対するエリスロポエチン治療による網赤血球の増加が関係していおり、維持透析開始後には透析の機械的操作によっても若干の赤血球が失われる影響もあるとされる。

 一方でグリコアルブミンは、ネフローゼ症候群のような極めて高度なタンパク尿がみられるときには低値となるが、赤血球寿命の変化には影響されないため、末期腎症やその治療、あるいは維持透析中であっても、血糖状態をより正確に反映するとの報告が多い。

 今回発表された論文は、維持透析治療中の糖尿病患者444人を平均2.33年観察し、HbA1c、随時血糖、グリコアルブミンという三つの血糖指標を、死亡リスクおよび入院加療という2点で比較検討した結果をまとめたもの。

HbA1cと死亡リスクは相関せず
2009年3月より日本赤十字社による献血時の生化学検査の項目にグリコアルブミン検査が追加されるなど、近年、血糖コントロール指標としてグリコアルブミン検査の有用性が注目されている。
こちらのコーナーでグリコアルブミン検査の関連情報をご紹介。
 観察期間中に156人が死亡していた。HbA1cと生存の単相関では、意外にも HbA1cが高値であるほど有意に(p<0.017)死亡リスクが低かった。また、年齢やBMI、合併症、ヘモグロビン値などの因子を追加した多変量解析においても、HbA1cと生存率についての関連は認められなかった。

 現状において、糖尿病透析患者における血糖管理の意義を示す明確なエビデンスが未だ少ない。この結果は HbA1cのみで評価した場合に、むしろ血糖管理の必要性について否定的な結論を導く可能性がある。

 なお、随時血糖も単変量での解析で死亡リスクとの有意な相関はみられず、年齢などを追加し検討しても有意差はみられなかった。

グリコアルブミンは低値であるほど死亡リスクが有意に低い
 その一方、グリコアルブミン(GA)は低値であるほど死亡リスクが低いという結果が得られた。その相関は単変量解析では有意でないものの、年齢等の因子を追加した場合は有意な相関が確認された。年齢、PVD(末梢血管障害)の存在、ヘモグロビン値、アルブミン値を追加したベストフィットモデルでは、GAが5%上昇した場合の死亡リスクのハザード比は1.14(p<0.03)であることが示された。

入院加療の必要性ともGAのみが有意に相関

 
 本研究においては生存率だけでなく、入院加療の必要性についても、GAのみが有意な相関が確認されている。

 HbA1c、随時血糖、GAをそれぞれ5分位に分け、17日以内の入院加療を受けた患者の頻度を比較すると、HbA1cと随時血糖は相関がみられない一方で、GAは高値の分位ほど入院受療率が高い傾向がみられた。とくに最もGAが低い第1分位と最もGAが高い第5分位の間、および、第2分位と第5分位の間には有意差があった。入院期間を30日以内とした場合にも、同様の結果が得られた。

透析開始後も血糖コントロールは大切
 以上の結果は、維持透析開始後では、GAによる血糖管理が重要であることを示している。また、糖尿病透析患者の血糖管理を HbA1cや随時血糖のみで評価することの危険性を示唆するものと言える。

Glycated Albumin and Risk of Death and Hospitalizations in Diabetic Dialysis Patients

グリコアルブミン(GA)とは:検査時点から過去4週間(とくに直近の2週間)の血糖コントロール状況を反映する検査。

関連情報
グリコアルブミン情報ファイル(糖尿病NET)

[ KUBO ]
日本医療・健康情報研究所

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